あなたに逢えて、本当によかった。

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 純平くんと最初に話したのは二学期の初め頃だったので、文化祭はお陰でとても楽しかった。友達がたくさんできて、紀美子たちとクラスの出し物の喫茶店やお化け屋敷を回ったり、純平くんたちとは軽音部のライブを観に行ったり、とにかく人に恵まれていた。  文化祭というのは不思議なもので、今まで話したこともなかった人たちと話すことができる。文化祭マジックというやつだ。それで私は初めて高山くんと話すことができたのだった。 「高山くん、それ、三組のとこで買ったの?」  フランクフルトを持つ彼にそうやって話し掛けた。一緒に回っていたみんなと離れてトイレに行った帰りに偶然ばったりと会ったのだった。 「うん。こういうところで食べるものって、なんでも三割り増しくらいで美味しいんだよね」 「分かる!二年一組のサーティーワンも、いつもよりおいしく感じたもん」 「あー。アイスもあったんだ。あとで買いに行かなくちゃ」  そう言ってから、意外と気安く話すことができるものだなと感心した。  私は勇気を出して、何でもないことのように一緒に写真撮ろうよ、と誘った。みんなと撮ってるんだよね、と付け加えて。 「いいよ」  軽く応じてもらえたことに胸を撫でおろして、私は見事に高山くんとのツーショットをゲットすることができたのだった。  浮かれて紀美子たちのところに戻ってその話をすると、私よりもはじゃいだ紀美子が良かったねーと言っていた。私が高山くんのことが気になっていることは、紀美子と裕二しか知らない。そして、裕二は高山くんとたまに話をする男子の一人だった。 「あいつ、彼女はいないよ。好きなやつがいるかは聞いてねぇけど」  裕二がそうやってこっそり私に彼の情報をくれる。それが私にとっては恋心に移っていくきっかけになっていたのかもしれない。三学期に入るころには、私は高山くんのことが好きなのだと、明確に自覚していたのだった。
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