あなたに逢えて、本当によかった。

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 二年生になってすぐに、裕二に彼女ができた。紀美子と私はそれを大いに喜んだのだけれど、裕二から驚くべきことを言われた。 「ほかの女の子と遊ぶのをやめてって言われたんだ」  そう申し訳なさそうな、悲しそうな声色で裕二は言った。下を向いて、たぶん自分でもそれは嫌なんだと思っているのが手に取るようにわかる姿だった。  私たちは三人とも部活に入っていないので、ちょこちょこ学校帰りにフードコートのマックに寄って食べながら話したり、休日にカラオケにも行っていた。それが、ぜんぶなくなるということだった。 「なにそれ。そんな束縛されるのオッケーしちゃったの」  そう言ったのは私だった。  純平くんたちとも仲は良いけれど、裕二と紀美子は親友だと思っていたからそれはひどいショックだった。 「俺から告白したし、これからって時に嫌だなんて言えなくて…俺、どうしたらいいんだろう。そりゃ、彼女とこれからデートもするだろうし、二人といる時間は減るかもだけど…それでもやっぱり、今までみたいに三人で遊んでたいのに……それができない」  とても苦しそうに何度も詰まりながら、裕二はまた項垂(うなだ)れてしまった。 「いるよね、男女の友情は成立しないって人。香織ちゃん、クラスちがうし心配なのも分かるけど、それでも好きになったのは私たちじゃなくて香織ちゃんなのにね。どうして伝わらないんだろうね」  苦しそうな裕二を見て、私はそう言った。つづいて紀美子が口を開く。 「もう少し二人の絆が深まってから、ちゃんと話してみたら?それまで私たちは待ってるし。裕二のことは友達として好きだけど、私は裕二を応援したい」  私はそんな大人なことを口にする紀美子をすごいと思った。私にはそんなことは言えなかった。でも、私だって待てる。一緒にいる時間がなくなったからって友達じゃなくなるなんてことはない。それでも寂しさは拭えなかった。 「…私も、待てる。うん、応援するよ。だから、裕二は今は彼女さんを優先させてあげて」  本当は言いたくなかったけれど、紀美子が裕二を思い遣ってそう言ったのなら私も応援しなくてどうする、と自分に言い聞かせた。裕二も、わかった、ごめんな、と言ってまだもやもやはしているだろうけれど納得してくれた。 「でも、親友だからね、それは変わらないから」  言わずにはいられなかった。だからそれだけ伝えたら、裕二はすこし涙目になっていた。紀美子もしっかり裕二を見つめて、私も、とだけ言った。そして結局私たちは、三人して少しだけ泣いた。
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