あなたに逢えて、本当によかった。

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 そうして裕二はほかの男の子たちとよく一緒にいるようになった。その姿を見ていると、妙にもやもやした。私たちの方が仲が良かったのに、そんな思いが沸々と浮かんでくるのだった。 「これって、私がおかしいのかな」  私は紀美子に素直に相談した。彼女はすぐに首を横に振って口を開いた。 「おかしくないよ。恋愛で嫉妬するように、友達だって嫉妬するよ。私だって、友達取られたみたいで本当は嫌だよ」  紀美子もわだかまりを感じているのだ。それを知ると、どこか救われた気がした。まだ紀美子がいてくれてよかった、と心から思った。  学校というのは不思議な空間で、そこが世界のすべてのように感じる場所だった。実際、私たちは学校が世界のすべてだった。学校の友達、授業、放課後や移動教室のときの友達とのおしゃべり。そういったものでしか、私たちの世界はできていない。学校というのは教育の場であると同時に、協調性を養う場なんだとテレビでやっているのを見たことがある。友達を作ること、苦手な人との接し方、先生との関係。社会に出る前の助走なのだとテレビでは言っていたけれど、私には未来のことなんてまだ描けない。今が、目の前の出来事が、それがすべてだった。
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