おめでとうございます

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おめでとうございます

 それは夏休み真っ只中の昼過ぎだった。  今日もうだるほど暑い。日中、外に出ると気が滅入ってくる。  こんな暑い日はエアコンの効いた室内で涼んでいる方が増しだろう。  実家のリビングでアイスコーヒーを飲みながら(くつろ)いでいると突然、スマホの着信音が鳴り響いた。 「ンうゥ、なんだよォ?」  ボクは(わずらわ)しくて仕方がない。  しかしこのまま放っておくわけにもいかないだろう。  取り敢えず手を伸ばしスマホを手に取って着信画面を確認した。  画面を見ると電話番号は表示されているが、未登録だ。  もちろん見たこともない電話番号だ。 「ン、誰だろう?」  後先も考えず電話をスピーカーにして繋いでみた。 「もしもし……?」  いったい誰なんだろう。相手の出方を(うかが)った。 『おめでとうございます』  いきなり見ず知らずの女性の明るい声がスピーカーから響いた。 「えッ、なんですって?」  なにが『めでたい』と言うのだろう。 『このたび、お嫁さんが当たりました!』 「はァッ、お嫁さんが?」  なんだ。それは。  思わずボクは聞き返した。
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