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「うぇっ……ひっ、もう、やだぁ……」
家を出る時には止まっていた涙は、だんだん暗くなり始めた帰り道を歩くうちに、またぼろぼろあふれだした。
ひたすら泣きじゃくり、しゃくりあげながら、ときどき刺すように冷たい風が吹く夜の道を歩き続ける。
のそのそと動かす足は一歩一歩がすごく小さくて、いつまで経っても家に帰れないような、世界にひとりぼっちになっちゃったみたいな、そんな気がしてきた。
ただでさえ暗い場所は怖い。
だけど今日はそれよりも寂しさと辛さが勝って、だけどやっぱり前がよく見えない夜は嫌で、でも早く家に着きたくて……。
のろのろと曲がり角にさしかかったそのとき、
「わっ!」
「ひやぁっ!!!」
横からいきなり大声がして、私はびくっと飛び退く。その拍子にバランスを崩して、思いっきり尻もちをついた。
「っ! いっ……たぁ……」
ぼろっ。
また、自分のきもちとは関係なく眼の前が濡れる。
「うぐっ、ふぇ……」
「えっ!? うわ、ごめん!」
おしりも痛いし、びっくりしたし、泣きたくないのに涙は勝手に出てきて止まらない。
なんかもう、いやなことばっかりだ。
涙で顔がべちゃべちゃになる。
拭い続けた拳も濡れきって、もう乾いてるところがない。
「うっ、うわああっ……」
「ああああ、だからごめんって、ちょっとイタズラしようとしただけで……」
もう胸の中がぐちゃぐちゃで、ごちゃごちゃで、なんにもわからなくなって、ただただひどいきもちで、うずくまった私の髪に、おそるおそるやわらかいものが乗った。
「あー……えっと、ほんと、ごめんな」
戸惑ったような声。
ほんの少し、声がほどけて。
「――なあ、笑って?」
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