卵焼き

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「充ー」 「まだ髪、やってる!」 襟をつかまれる。猫にするみたいに。 「ガッコ、行くぞー」 「ひっ…ひとりで行ける!」 さぼり魔のくせにっ。なんでそんなに一生懸命、俺を学校に連れて行こうとするんだよ!? で、問題は学校帰りからの一連の流れだ。当然のように倫也は二年四組に俺を迎えに来て、チャリでにけつして帰る。スーパーに寄り、夕食メニューを話し合いながらかごに食材を放り込んでいく。 朝は俺がまるでだめだから、その分夕方の洗濯物の取り込みと風呂掃除は俺がやることにした。そのあいだ、倫也はくつろぐでもなく買って来た食材を整理したり炊飯器に米をセットする。 いっしょにキッチンに立って、向かい合っていただきますをして、並んで皿を洗う。入浴を済ませれば、剥いた果物か棒アイスを差し出してくる。 ………なんでだよ!? 分担という面で言えば、朝のかぎられた時間に自分の身支度もしながらすべての家事をこなす倫也の方が負担が大きい。夕食だって俺がやると言ったのにキッチンに来る。そうすれば倫也の方が慣れているから、どうしても俺はお手伝い程度になってしまう。 なんで?? わざわざ? めんどくさいだろ? 途中でひっぱられて出たから、髪型は目も当てられない状態だ。スプレーで湿らせたはいいが、整えても乾かしてもいない。 「あーもー、どうすんだよこれ…」 自転車で向かい風に吹かれて、絶対に前髪うねるだろ。 「充は髪きれいなんだから、なにもしなくていいんだよ」 俺のこめかみあたりの髪に触れてくる。 「…さわんなっ」 髪きれい、とかナチュラルに言うなよ。 「そうやって女の子にも、あることないこと言ってんだろ…」 「え?」 「なんでもねえ。急ぐぞ」 倫也は俺につかまる手に力を込める。わかんねーやつ。
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