卵焼き

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制服のままでスーパーに寄る。夕方は学学童保育の帰りだろうランドセルを背負った子どもやその親、お年寄りなんかが多い。高校生なんて俺たち以外にはひとりも見当たらない。 「充、なに食べたい?」 濃いピンク色の買い物かごを下げる倫也は、気づいてるんだろうか、ときおりすれ違う奥様方に二度見されている。浮いてるぞ。 「に、肉…」 「肉ね、オッケ。(ぎゅう)?」 豚肉のソテーってのもありだな、とか言って倫也は特売って文字とスーパーのゆるキャラがプリントされたパックを手に取る。 「チキンソテーでいい?」 「ああ…なんでも」 ………って、違うだろっ!! 「倫也、お前さ…」 ひまなの? 実は友達いねーの? 「こう毎日毎日家にいなくてもいいんだぜ?」 うちに世話になっているからと気を遣っているのかもしれないと思った。だったら初めだけで、そのうちめっきが剥がれるだろうと予想した。だってこいつは校内きっての遊び人なんだから、おとなしく家事なんてしていられるはずがない。 だがすでに同居を始めて一週間。判で押したような規則正しい生活を続けている。 「俺がいたら、だめ?」 「えっ? だめじゃ、ねーけど…」 答えに詰まる。 正直、朝起こしてもらえて、めしはうまくて、干渉してくることもない。キッチンも風呂もトイレもきれいに使う。 気を回して話題を振る必要もない。近くにいるようになってわかったけど、倫也は陽キャってのとは違う。少なくとも俺の前では。あんまりしゃべんない。ま、俺たちに共通の話題なんてねえしな。無表情だし。クール系? でも不思議と威圧感はない。いい意味で空気っつーか、風みたい。 「倫也もほかにいろいろ、することあるだろ?」 「べつに…ない」 この調子だ。袋入りのみかんを選んでる。 「やっぱ冬はこたつにみかんだろ」 なんて言う。俺んちは大して広くもないリビングの、ソファの真ん前にどーんとこたつが置いてある。 まあ、いいけどさ。
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