卵焼き

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倫也はマスクを外した。 俺はつい、その横顔をガン見。 人の顔ってマスクを外すとがっかりされる確率の方が高いって何かで読んだけど、こいつに関してはまったくあてはまらない。外して下さってありがとうございますってレベルだ。 きれいな鼻筋、少し上向きの睫毛。薄い唇。適度に男を感じさせるあごから喉にかけての線。 倫也にはフツメンの気持ちなんて、わかんねえんだろうなあ。 さっきあんなこと言ってたけど、倫也には好きな人がいるんだろうか? 「彼女」はいないって言った。片思い? だとしたら意外過ぎる。 どんな相手なんだろう。倫也をもってしても落とせない女の子って。 つい野次馬根性を出して考えていると、倫也の指がこっちに伸びてきた。俺のマスクの表面をつまんであごまで下げる。 「くちあけて」 「………………え?」 言うことを聞いたつもりはなかったけど、唇が「え」のかたちになってた。 そこに、しっとりとしたなにかがそっと押し当てられた。 目の前よりもっと近くにある、倫也の柔らかそうなまぶた。睫毛が、俺の睫毛と絡み合いそうだ。 そう思った瞬間。 ぼっ、と熱が、火柱みたいに体の奥からふき上がった。 「………ん゛、」 しゃべれない。唇が唇でふさがれているという事実が、俺を混乱させる。 一度下唇を舌がなぞると、そのまま、歯列を割って侵入してくる。びく、と体がはねてしまう。ぬるい温度がくちのなかを浸す。
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