学校一のイケメン

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両親は今朝、カナダに出発した。あっちの支社だか何だかの手伝いとして、英語だけはできる父親が選ばれたらしい。物見高い母親はパート先に三ヶ月の休みをかけあってついて行った。 倫也は今日までなにも話しかけては来なかった。親の言うとおりなら、俺のことは伝わっているはずなのに。 だから、家には来ないと踏んだ。 そうだよな、今までひとりだったなら、わざわざ関わりのないフツメンの俺といっしょに生活なんてしようとするはずがない。 そう結論づけた俺は、ほっとして帰り支度をし始めた。お気楽なひとり暮らしってのも悪くないかもしれない、なんて思って。 「充ー、帰るぞ」 誰だ? 振り返った。 教室のドアの上側のサッシに片手を軽く掛けて、うちのクラスをのぞき混んでいる。 もう片方の手で、髪をかき上げた。少し茶色がかった瞳と、目が合った。 はぁあ!? 「なんで!? なんで鈴木がトモくんと!?」 「え、あれ月ヶ瀬だろ…? 充に用か?」 女子だけじゃなく、男子までざわつき始める。ちなみに俺は大方の女子に苗字を呼び捨てにされている。別に親しさの表れじゃない、どうでもいい、とるにたりない存在として。 俺は大あわてで、椅子を蹴って立ち上がる。 「ちょっ…! いきなりなんだよ?」 「なにって、聞いてんだろ、親から」 聞いてるけど…。名前呼びは、聞いてない! ドアのところからこいつを押し出したくて距離を詰める。こいつ俺より背、高い。むかつく。 「なになにー? トモ、鈴木と仲いいのー? 知らなかった、どっか行くの?」 クラスのマドンナ、ほぼしゃべったことないけど、の平子さんが倫也と俺のあいだに体を入れるようにして割って入る。 いい匂い(香水?)が二重になる。イケメンの分と美人の分。 倫也は慣れきったもんなのか、平子さんの方を見ようともしない。 ていうか…なんでそんなに俺をにらむんだよ? 手が伸びてきた。俺は、そんな理由はないのに殴られるんじゃないかって思って首をすくめた。 倫也の手が、俺の首ねっこをつかんだ。 「今日からいっしょに暮らす」 「………えぇ!? まじぃ?」 まじかよ…。
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