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気遣わしげに俺の目をのぞく。いつもよりぬれた唇が、たった今までのことを連想させずにはおかない。イケメンのくせになにやってんだよ。
「充…どうしてそんなにえっちな顔で、えっちな声出すの…?」
「………はぁあ!?」
俺の頬に手を添えて、親指を唇のすきまにねじ込んでくる。
「煽ってるの?」
「おま、ばっ…」
唾液をかきまわされて、ねち、と音がキッチンにちいさくひびく。
「今日、最後までするつもりなかった…っていうか、どこまでできるかわかんなかったけど」
さいご??
倫也はあいかわらず優しい声だったけど、なんていうか瞳がまじで、なんなら少しこわいくらいだった。怒ってんのかよ。俺が服を汚したから?
「充のこと、やっぱりぜんぶ俺のものにするから」
「ベッドに行く余裕ないから、背中が痛くないようにキッチンマットに横になって」
やけに真剣な倫也のいきおいに押される。
「寒くない?」
「ああ」
「大丈夫?」
「おう、ばっちりだぜ」
倫也は目を丸くして、それからくすりと笑った。
「それ、どういうこと? 充」
明日には親が帰って来る。
「今夜は俺は倫也のそばにいるって決めたんだよ」
これから倫也がなにをしようとしているのか、よくわかっていないところもあるが。
「充…おとこまえ」
かわいいと言ったり男前と言ったり、忙しいな。
キスをしてくる。俺のをしゃぶった口だということは…考えないことにする。
よれてくたくたになったワイシャツを、倫也はボタンを外して脱いだ。
キッチンの小窓からさす月明かりで、ネックレスの小石がきらめいた。フライ返しや菜箸を器用に使う腕。薄くついた腹筋。あたりまえだけど、男だ。
それから、下も脱ぎ捨てた。邪魔なものを取り去るみたいに、ためらいなく。今まで俺だけがあらわな姿だったと、あらためて羞恥心がこみ上げた。
それから、はっとする。
めっちゃ勃ってんじゃん! 倫也、お前!
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