ベージュ色のセーターは

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今の今までそれについて考えたことはなかった。倫也がどう感じていて、どう反応しているかなんて。 「どうしたんだよ、それ…おかしいだろ…」 膝をついて俺にまたがった姿勢だから、どうしても目に入る。まるでなにかを主張しているみたいに、こっちに向かって。 「いや、男なんだからおかしくないけど、でも…」 俺を好きだっていうなら、当然のことなのかもしれない。でも、俺だぜ?  倫也は目を閉じて息を吐いた。 「勃ちすぎて痛い。こんなふうになるなんて、知らなかった」 かっこよく髪をかき上げながら、なに言ってんだよ!? でもわかる。さっき、俺も同じだったから。 「充のせいだよ」 「俺かよ…」 「…さわって」 同じものがついてるんだなあ、と思った。全然違う人間だけど。共通点は性別くらいだけど。 妙に堂々としていて、複雑なかたちと単純な機能。不思議なもんだと俺は少し笑う。 手を差し出して、握手をするみたいに、にぎる。 微妙な違いはあれど基本は同じだ。手ざわりを、へこんだところやつるつるしたところを、指で確かめる。 「あついぜ…熱あるんじゃないのか?」 「熱なら、ずっとある。三ヶ月前から」 倫也はもう一度、はあ、と息を吐く。こころなしか、さっきより濃い吐息。三ヶ月前。倫也と暮らし始めた日だ。 倫也は俺のゆるゆるとふれる手を押しとどめた。 「あし、ひらいて」 「足? こうか?」 倫也はそこでキッチンの作業台に手を伸ばした。 「これなら、充の家に元々あったもんじゃなく俺が買ってきたやつだから、まあいいだろ。体に害もないだろうし」 オリーブオイルの小瓶。スーパーによく並んでいる、めずらしくもなく高価でもない薄緑色のやつだ。 「………は? え?」 「正直、女の子とは何人か付き合ったから俺は童貞ではないけど」 …って、つめたいんですけど。 けつの真ん中に、ひやりとした感覚。 「いつか充とできるかなって思って、イメトレしてた」 穴、いや、むしろ(すぼ)まりと呼ぶべき箇所の周辺を、オイルをまとわせながら倫也の指がゆっくりと撫ぜる。 いれてみるよ、ってひくい声が聞こえた。ずぷっ、と体の中に挿し込まれた。
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