ベージュ色のセーターは

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「…女の子の方がいいんじゃないのか」 自分の体がこころもとない気がした。 「倫也なら…美人だって巨乳の子だって、選び放題だろ」 それなのに倫也はいつものささやくような低い声で、充、と呼んだ。それから、いろんなところにキスをする。ぺたんこの胸。うっすらついた腕の筋肉。産毛が生えたへそ。 おぼれそうになるような、キス。 「なんで俺なんだよ。俺なんか、普通だしっ…」 平々凡々のただの高校生だ。 この歳まで、本気で好きになった相手もいなければ、俺を好きだっていう人だって現れなかった。 倫也だけだ。 「どう見ても男だし! 同じ男にしたって、もっとアイドルみたいに可愛らしいのとか、いるじゃんよ…」 「充は普通だからいい」 倫也は、俺が言いつのるのをさえぎる。 「その普通さに何度も救われた。助けられた」 俺の目元を指で擦る。その手つきも俺を見る瞳も、とても優しい。 「…っ、泣いてねえし」 「学校一のフツメンていうか…俺にとっては世界一のフツメンだよ。くだらないことで笑い合えるし、俺が悲しんでたらいっしょに悲しんでくれる」 「…『普通』を連呼するな」 「それに、さみしいとき、そばにいて甘やかしてくれる。女も男も関係ない。充だからいい」 真夜中のキッチン。裸の男子高校生が、ふたりきり。明かり採りの細長い窓から入る月明かりで、倫也のわずかに茶色がかった虹彩まではっきりと見えた。 「そっ…そうかよ…」 とても見返せなくて、顔を横にぷいとそむけてしまう。 「照れてるの? 充。自分から聞いたくせに」 「…照れてねえし」 ただ顔がちょっと熱いだけだ。 倫也はふわっと笑う。そして俺の両足を抱えると、胸の方に倒してくる。そして、そうしながら、体をぐっと押しつけるように傾けてきた。
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