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「俺もすごくきもちいい…充の、せいで」
余裕のない表情をしていやがる。切羽詰まって、こらえている。こいつがそんな顔をするなんてきっと俺以外誰も知らない。
「とも、まっ…」
さっきはちゃんと言わなかった。倫也の気持ちだけ聞き出しておきながら。
「倫也…っ」
浅い呼吸の中でその名前を呼ぶ。もう、出ちゃいそうだ。けれどその前に。
「ん…なに?」
いつか見た、いや、あのときよりもずっと熱っぽい目をして俺を見る。
「あの、…さ、…」
伝えたいことは、単純だ。けれどなかなか言葉にならない。
「なに」
手を伸ばして、その整い過ぎてむかつく輪郭をてのひらではさんだ。目をがっちりと合わせる。
「倫也。好きだ」
本当はちゃらいなんて思ってなかった。象牙色の肌にこの緑の石が映えて、きれいだって思ってた。
倫也はせつなげな瞳の奥で微笑んだようだ。
「…限界かも」
甘い吐息。
「俺も…っ」
「充…好きだよ」
甘えん坊で優しくて、ちょっと強引な、俺だけのおおかみ。
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