世界一のフツメン

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話すのを止めさせたかった。もう話さなくていい。わかってるから。 「後悔なんか、してねえよ。してねえから」 無造作なくせにキマってる頭を、力まかせにくしゃくしゃにする。 あのときの気持ちも、伝えたことも、ぜんぶ本当だ。倫也がいなくなっても、いなくならなくても、二度と会えなかったとしても。変わらない。 「充と離れたくなかったし、じーちゃんともいっしょにいたかったから…どこにも行きたくないってちゃんと伝えた」 おじさんたちの前で静かで、気を遣っているふうだった倫也がそんなことをしたのか。それだけで、胸がいっぱいになりそうになる。 「また、いっしょにいられることになってうれしいよ」 「…うん。俺も」 倫也の匂いがする。ひさしぶりで懐かしくて、親しみのある匂い。それから、抱きしめる腕の重さ。 「そこ! なにしてる?」  はっとして体を離そうとした。新しい担任が、教室に入って行くところだった。男の、まあまあ若い先生。 「月ヶ瀬と…えーと、田中だっけ?」 …先生まで! 「田中じゃないです!」 倫也は、腕からすりぬけようとした俺に後ろから抱きつく。 「うわっ」 「鈴木充。世界一のフツメン」 「紹介すんな! ってか、なんだよその紹介のしかたは!」 「いちゃついてないで教室入れよ!」 担任はあくまでさわやかに言った。 「いっ…いちゃついてなんかないですっ! ほら、離れろよ! 戻るぞ」
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