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「今日は俺がやってもいいけど、ほんとにここで暮らすなら明日からはきっちり当番制だからな! 朝めしも洗濯も風呂掃除も!」
ほれ、めんどくさいだろ!? 俺のぱんつなんて干したくないだろ?
夕食くらいは同じ学校のよしみで作ってやってもいいけど…こう言えば、出てくだろ。
「いーよ。慣れてるし」
「………えっ?」
それが昨日の夕方のやりとり。
意外と倫也はフツーだった気がする。猫かぶってたのかも。残さず食べてたし(チンジャオロースと冷凍餃子)、使った皿は自分から洗うと言い出した。おとなしく風呂に入って、倫也は地方の大学に行くために家を出た兄ちゃんの部屋で、俺は自室で寝た。
そして朝になって、あいつなりに気を遣ったのか朝めしの支度をしてくれて、学校に来た。行き先が同じだから自然と、いっしょに。
ボコられた? そんな話になってんのかよ。
「…いっしょに生活するってのは、ほんと」
「え?」
俺のツレ、三宅の顔が歪んだ。サラサラヘアで吊り目で、ちょい一軍風だけどゲーマーだからやっぱ三軍。
「たまたま同じタイミングでお互いの親が、」
倫也の場合はおじいさんだけどそこは適当に端折る。
端折りつつも、ここは本当のことを話した方が良さそうだと判断した。俺はもちろんボコられてなんていないし、言いたいことがないわけじゃないが、少なくとも倫也は今日の朝食を作ってくれた。
「事情があって留守になることになった。家に高校生だけじゃ心配だからって、親の命令でその期間いっしょに暮らすことになった。それだけ」
クラスの約半分が耳をそばだてている。俺がこんなに注目されるなんてまずない。
「じゃあ、寝顔とか見た!?」
平子さんが俺に、俺なんかに話しかけてくれているぞ。見上げる目、でっかい。睫毛がくりくりと上を向いている。
「…いや、寝るのは別の部屋だから」
「なーんだ、つまんないの」
つまらない男だと言われたみたいでヘコむ。
「そのあいだは、お前んちがヤリ部屋になるってわけ?」
俺たちフツメングループの中で唯一、女の子とエッチした経験があると公言している長野がにやにやする。
「みさかいのない狼だって言われてんぜー、月ヶ瀬は」
なぜか俺が平子さんににらまれる。
「まっ、気をつけろよな!」
「なんか面白いことあったら教えてよ、鈴木」
平子さんに、何はともあれ話しかけられたことを喜ぶべきなのだろうか。
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