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学校一のイケメン
まぶたの裏に光がみちあふれて、たゆたっている。溺れているような浮かんでいるような感覚。あたたかくて、不思議とこわくない。このあたたかさを、前から知っている。
「う…ん…」
耳をくすぐるような、かすれ声。
腕を伸ばせば、温かい。
えっ?
てのひらを這わせて指でたどって、感触を確かめる。
しっとりとして、なめらかだ。
俺が生まれる前から飼っていた犬は二年前に死んでしまったから、犬じゃない。
それから、細い毛の密集したとこ。かきわければ、地肌に温度がこもっている。
なおもまさぐっていけば、硬かった。でもなにより感じたのは、その熱さ。それから質量。先端は丸みを帯びて、つるりとしている。手におさまりきらない大きさの………肉の棒。
「………っ!?」
俺は息を吸い込んで叫んだみたいな変な悲鳴を上げながら、いきおいよく起き上がる。
顔を手で覆う。
今の、は。まさか、いやでも。
おそるおそる、顔を上げて横を向く。真横というよりは少し下。
明るい髪色が朝の光に透けてほとんど金色だ。額から鼻筋にかけて、むだのないすっと通ったライン。閉じたまぶたはひたすらに柔らかそうだ。薄く色づいたかたちのよい唇。
喉仏。象牙色の胸が、めくれた毛布の下であらわになっている。
銀色の細い鎖、その先端の緑色の小さな石が、シーツの波のあいだに投げ出されている。
目が、離せない。
筆で刷いたみたいな、これまたかたちのよい整った眉を寄せた。
まぶたがゆっくりと開く。
その下の色素のやや薄い虹彩が、俺を捕らえた。
「…おはよ」
ほとんど唇を動かさない小さな声は、俺の耳にだけ届いた。
そいつが起き上がると、毛布がするりと落ちた。薄ピンクの乳首。脇腹から腰にかけて、締まった線。しっかりと見てしまう。
「…だから! なんで裸なんだよ!?」
「…お前もな」
「………えっ!?」
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