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質問の答えをせがむ子どもたちを、ノコッタは、微笑ましげになだめた。
「ふむ、死後の世界について、ですか。良い質問ですね。では、小さき星たちよ。君たちの質問に、一つずつ答えていきましょうか。
まずは、人はなぜ死ぬのか……それは、死後私たちの魂が、【蒼穹】様のもとへと還るためです。この世界に存在する、ありとあらゆる命は、すべて【蒼穹】様からのありがたい贈り物であり、私たちは、いずれ与えられた命を返す義務があります。しかし返すためには、【蒼穹】様のいる世界、つまり、死者の世界へ赴かなくてはなりません。命に限りがあるのは、そういった理由からなんですね」
すると、先ほど、死が怖いとおびえていたおとなしい少女が、落胆の表情を浮かべた。ノコッタは、すかさず彼女の頭を撫でて励ました。
「だけど、落ち込む必要はありませんよ。
つぎに、人は死んだらどうなるのか、という問いですね。人間は死ぬと、魂の存在へと生まれ変わります。そして、生きている間の行いによって、魂の行き先が変わるのです」
「はい! ぼく知ってるよ! 世界の外側には、そうぞうしん、と、はめつしん、がいて、ぼくたちをいつも見てるんだ」
早口な少年が自慢げにそう言った。
「そのとおりです、ランス。君は、私の話をよく聞いていますね。彼の言ったとおり、この世には、“創造神”と“破滅神”の二通りの神様が存在し、そして、死後我々の魂の向かう先でもあるのです。
みんなの大好きな【蒼穹】様は、創造神の仲間であり、私たちが暮らす世界を創った偉大な神様なのです。そして、死後の魂を迎え入れてくださり、私たちは一つの存在となって、苦しみを忘れ、極楽を分かち合うのです」
「じゃあ、みんなと一緒? 怖くない?」
おとなしい少女が、ノコッタに答えを乞うた。
「君は誰よりもやさしい心を持った子です。大人になってもその気持ちを大事にし続けられたのなら、きっと【蒼穹】様のもとへと行けるでしょう。だからマリアンヌ、死を恐れる必要はありませんよ」
おとなしい少女をなだめたあと、ノコッタは他の子どもたちへと向き直る。
「ただし、生きている間に悪いことばかりを繰り返すと、人間はどうなってしまいますか?」
ノコッタの問いかけに答えたのは、活発な少女だった。
「魂が穢れて、死んだら破滅神のもとへと行ってしまいます。そしたら、終わることのない苦しみを永遠に味わうことになります」
「素晴らしい。満点の回答ですよセラーナ。だから私たちは、人として清く正しい行いをし、毎日欠かさずお祈りを捧げなければならないのです。わかってくれましたか?」
はーい! と、子どもたちが元気よく返事をした。
「では、今日はここまでとします」
説教がお開きとなってからも、子どもたちはノコッタの周囲に残り続けた。それだけ彼が、子どもたちに懐かれるほどの人格者だということが見てわかる。
ようやく最後の子どもが去ったあと、ヘンゲルに気づいたノコッタが近づいてきた。
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