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かつてこの大地には、現代をはるかに凌駕する高度な文明が栄えていたと聞く。
当時の都市部には、全面ガラス張りの塔が建ち並び、舗装された道には車輪をつけた鋼鉄の動く箱が多く行き交っていたらしい。それらは、馬車など比較にならないほどの物流を誇っていたそうだ。
きっと、凡人には想像もつかないような楽園の時代だったに違いない。
しかし、人類がどれほどの栄華を極めようとも、積み上げてきたものが崩れ去るのは一瞬だった。無情にも人類は、未曾有の大災害によって滅びたのだ。その原因は、戦争によるとも、不治の疫病の流行によるとも言われているが、真相は定かではない。ただ唯一判明しているのは、人類は身に余る技術力によって自ら滅んだということだ。
北方の小国ルグテンの、のどかな草原地帯に拓かれたフェンネ村から、緩やかな峠を越えた先に、旧文明の遺跡群はあった。人の管理を離れて久しい建物の残骸は、雨風にさらされ風化しており、道路のすき間から芽吹くたくましい植物たちによって、自然の一部へと還っていた。
悠久の時間の流れを感じさせるその光景は、見る者たちに、繁栄は滅亡の隣人であり、また新たな歴史は滅亡の先でしか誕生しないことを知らしめているようでもあった。
旧文明の遺跡群は、ルグテンの至るところで発見されている。人里近くに佇んでいたり、分け入った深い森の奥地や、あるいは鉱山の奥底にも。
レガシィ教団は、そういった旧人類の文明技術を管理、調査し、現代に復元して人々の生活発展に尽力する組織である。
またそれに伴い、滅んだ旧人類の過ちを教訓として人々に説教し、国民の意思を一つに束ねるための啓蒙活動にも精を出していた。
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