虐げられる貴婦人

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「お母様、お母様」  メアリー王女は死んでしまった王妃を抱きしめて泣いた。 「メアリー殿下」 ――ドン・シャピイ。私のメアリーをよろしくね。  駐英スペイン人大使、ウスタシュ・シャピイは、『腕をこすりながら』母を失った幸薄い少女に語り掛けた。 「大丈夫です。一生を賭して……あなたの命をお守りします」  そう言って、ひざまずき、その手をとった。 「「そうだよ、お姫様」」  城の門番、トムとエディがやってきた。  このふたりは双子で、どちらがトムでどちらがエディがわからない。 「トム、エディ」  親密なところを見られて狼狽するシャピイに、トムとエディは言い交した。 「変だな」 「そうだなー、変だな」 「「僕たちが現れたとたん、秒で手をひっこめたよね」」 「ひ、ひっこめてなどいない」  シャピイは恥じらって、言った。 「では、王女殿下、陛下に王妃陛下がお亡くなりになったのをお知らせしますから」  そう言って、シャピイは慌てふためき去った。 「逃げたのかな?」 「逃げたのかな?」
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