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「ん……」
ロンドン市内の家で眠っていたクロムウェル宰相の息子は起き上がった。
「喉がかわいた」
枕元にある水差しを取ろうとするが、母が入れ忘れていたので、厨房にまで歩いてった。気のいい太っちょの料理人、クレガーはもう休んでいるだろう。
水差しを火をともしたランプを持って歩いていき、厨房のドアを開けた。
すると、生臭い匂いに鼻を刺激された。
「な、ん……」
クロムウェルの息子は、靴がべたついているのに気付いた。
そっと足もとを見て、それが血だということに気づいた。
「血……?」
おびただしい血の元をたどっていくと、クレガーが目を見開いて仰向けに倒れていた。そのでっぷりとした腹には、ナイフが刺さっていた。
「クレガー! クレガー!」
テーブルにランプと水差しを置き、その動かない体をゆすった。
「クレガー! クレガー!」
まばたきひとつせず、瞳孔が開いているのを見て、それが「死」というものだということに気づいた。
クレガーが動かないことに必死になって注意をとられていたため、暗殺者がまだ残っていたことに気づかなかった。
「主の名において。異端者め! クロムウェルの息子か。お前もお友達といっしょの場所に送ってやるよ」
「え……」
判断が遅れたのはどっち?
「くそがぁ!」
クロムウェルの息子は、水差しで思い切り、暗殺者の頭を派手に叩き割った。
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