おみくじと人ならぬもの

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おみくじと人ならぬもの

「……ここか」  三百段近くある石階段を上り、寺輝は呼吸を整えた。  夏休みである七月後半の青々とした山の木々が、初対面の(てらき)を物珍しそうに覗き込んでいる。  汗すら蒸発してしまいそうな暑さに項垂れながらも、上りきった階段。そのゴール……目の前には疾うの昔に廃れたのであろう、古びた祠が来訪者を待っていた。  あれから三日後の正午頃、寺輝はスイミングスクールからの帰りに隣町の山を訪れている。  何故なら老婆から貰ったおみくじには「幾つもの村を滅ぼした“人ならぬもの”が支配する“人ならぬものの秘密基地”と称された山へ行け」。そう記されていたからだ。 「ははっ、化け物の秘密基地、ねえ。以前の僕だったら、どうせ昔の人が創り上げた嘘の物語だとかほざいていたんだろうけど……。今は、状況が状況だからな」  また、そのおみくじには老婆からのヒント? が書かれていた。  「おみくじで大吉を引くべし。さすれば、人々が戻って来るであろう」と。 (人々、ということは、母さん以外にも行方不明者が存在するのか……?)
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