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白銀の髪は毛先に向かうと紫青色に染まった【妖精姫】とは、本物の妖精ではない。
【妖精姫】とは、神様からの【贈り物】と呼ばれた。
1000年ほど生きると言われている妖精姫は、寿命100年の人間から生まれる。
6年前に、1000年を超える妖精姫がこの国で生を全うし、バルバトルグ家に新たなる【ギフト】が与えられた。
168カ国あるうち、6カ国がギフトを受けている。
この『オールドロアール王国』は数少ないギフト恩恵を受けた、富に溢れた国なのだ。
ギフトはとても貴重であり、ギフト欲しさに戦争をすることはよくあることだった。
そのため、ギフト恩恵を受けた国はそれはそれは大切に守られ、皇族との婚姻を交わし、皇族に神聖力を与えてきた。
【妖精姫の役割】は、国を護り、国の繁栄を齎すことである。
その大変貴重で大切な【妖精姫】は、バルバトルグ男爵家に生を受けたことにより、世間は騒然とした。
なぜなら、ギフトを受けるのは代々大貴族に授けられてきたのだから。
神様はギフトを授けるところを間違えてしまったのか?という不安は的中した。
バルバトルグ男爵家は妖精姫が誕生した際、すぐに王に取次ぎ、献上したことにより調子に乗っていた。
周りからもてはやされたアイナノアは、そんな両親を見て育ち、まるで王族のような振る舞いをし、やりたい放題に過ごした。
国を守ることを放棄した挙句、皇太子と子を成すことなく、呪いをかけてこの世を去ったため、王国は破滅へと導いた。
アイナノアよ、なぜ呪いまでかけていったのか教えてくれ。
人間から生まれる『エルフ』のような見た目の妖精姫は、優れた美貌により大変モテたはず。
なのにどうして?大切に育てられたし、男爵令嬢からお姫様のように過ごせたことでしょう?
たっぷりの白いチュールレースが天蓋から下がるのを見上げ、深いため息を吐いた。
本来なら私はここにいる人間ではない。
いや、妖精姫は人間とカウントしていいのか?
悶々と頭を悩ませ、眉間に皺を寄せたまま広いベッドの上を転がった。
シミ、くすみのない美しい手は陶器のように白くて小さい。
中身は17歳の女なのだが、アイナノアに呪い殺されたあとアイナノアに憑依してしまった。
産まれた瞬間、なんで?!とひたすら困惑していたが齢5歳にして、もう諦めた。
アイナノアとして生まれたからには、調子に乗っていると死刑宣告されることはわかりきっている。
というか、私がアイナノアの首を刎ねる執行人だったのだから、首が落ちたあともよーーーく知っている。
落とした首がそのあと腐りきるまで野晒しにされ、肉体は魔獣の餌にされることまで。
「いやぁぁ!!私がアイナノアでいたら王国の檻の中に閉じ込められるーーー!!!」
肌に吸い付くような絹のドレスを纏い、ジタバタと手足を動かした。
もう何度目かわからない、全身全霊の拒否だ。
神様が私を転生させたのなら、見てるわよね?!
なんてことしてくれたのよぉぉ!!
それとも、これはアイナノアの呪いによるものなのー?!
誰も答えてはくれない静かな部屋に響いたのは、開け放したままの窓から流れてくる凪いだ風の音だけだった。
ムクリと上半身を起こし、気怠げに窓の外を眺めた。
ここは城下でもなければ、皇城の中でもない。
中央王国から離れた辺境の森、エデンの果実と呼ばれる森の中に建てた小屋で、ひっそりと1人で住んでいた。
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