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だが、第一帝国騎士団も知らないのだ。
アイナノア・エアディレフ・バルバトログ(本物)が自分自身にも呪いをかけて、人目に映らない姿になったことを。
アイナノアよ、なぜ自分にも呪いをかけてしまったの?間違えてしまったとか?
「“聖女、妖精姫”よ、皇帝の命である。
直ちに表へ参られよ」
うっすいガラス窓はひび割れていて、騎士団の野太い声が小屋の中に広々と響く。
窓枠からソッと頭を出すように外の様子を伺ってみた。
体は透けているから見えるハズないのに、つい防衛本能で隠れてしまう。
帝国の騎士団なんて滅多に見れない。
こんなど田舎で、煌びやかな騎士団を拝めるとは有難い。なんて思うわけもなく。
内心ビクビクと怯えていた。
なんで?!アイナノアの両親が帝国に私を売ったの?!
帝国に行きたくない理由はもう一つあった。
アイナノア(本物)が帝国の守護をすることを辞めた理由が、皇太子だ。
神を愛し、愛された絶世のイケメン。
教皇でもある皇帝、アーロン・ウィリアム・リチャード・キンバリーは、神に愛された息子にファーストネームに“アダム”と名付けた。
土と命の息吹から創造した初めての人間がアダムだ。
教皇たちは誕生した皇太子から神の加護が強力であることに気が付き、継承権を第1として授けられたとのこと。
教皇には8人の皇女と6人の皇子がいる。
その中でアイナノアはアダム皇太子と婚約させられるのだ。
前世で見たアダム皇太子は、神が創造したと言われるほどの美貌だった。
顔が整っているのは勿論、神殿で過ごすことが多い彼の肌は陽に晒されることも少なく、くすみも赤みもない透明感溢れる肌をしている。
直線的な鼻筋は高く、顎は小さい。
厳粛な顔つきに見えるのは、凛々しい眉が跳ね上がって、ガラス玉を入れたようなゼニスブルーの瞳。
金と銀の中間色のような長髪ホワイトブロンドは神々しく見え、“神の子”として崇拝されているのも納得した。
アダム皇太子と婚約したあと、アイナノアは彼の美貌に惚れ込み、ベッタリだったそうだ。
だが、アダム皇太子はアイナノアに無関心を貫き、結婚後も初夜を迎えることなどなく、食事も会話も一度もなかったとか。
言われてみたら、最期に残した言葉も皇太子に向けた恨み辛みだった。
あの城に閉じ込められたまま夫となったアダム皇太子からの寵愛は受けられず、“神の子から嫌われたアイナノア”と噂をされ、皇宮では悲惨な生活をしていたようだ。
死刑執行人として様々な噂をしてきたが、アイナノアが皇太子に嫌われて当然であった。
アイナノアは、他の貴族や従者と性交を繰り返しては肉欲に溺れていたからだ。
毎晩、代わる代わる男たちとまぐわいまくった結果、皇太子がブチギレて彼女を断罪するに至った。
神聖な身を堕落させ、避妊もしていなかった。
アイナノアを含めた男たちもまた、死刑が執行された。
慈悲深くも冷酷な皇太子は、アイナノアを愛してなどいなかったから、簡単に死罪を言い渡せたのだ。
けれど、アイナノアは皇太子にベタ惚れしていたし、アタックしまくった。
もちろん、カラダを使って誘惑しまくったが、全く見向きされなかった。
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