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あの鉄壁なガードの持ち主は、愛らしい美貌を兼ね備えたアイナノアにすら興味を持たない。
つまり、あの皇太子の前に行けば再び同じ運命を辿る結果になる。
ゴミ屑を見るような目だったことを思い出した。
死刑執行人としてアイナノアに同情したのは、仮にも彼女は皇太子の妻なのに。と思ったからだ。
だが、その同情が良くなかったのだろうか。
私はこうしてアイナノアとして憑依して、透明人間として過ごしている。
アイナノアが実際、どれほど淫乱な女性だったのかは知らないが、こっそりアイナノアと関係を持った貴族がかなりの数になったとかで、世間を騒がせていた。
でも、今の私は淫乱とは程遠い死刑執行人だった頃から現在まで完璧な“乙女”だ。
肉欲に溺れることなんてない。
ただ、愛されることもなく、女性としての悦びすら与えられずに1000年近く皇宮に閉じ込められるのは、苦痛だと容易に想像がつく。
アダム皇太子は、極度の“女性嫌い”だからだ。
女性嫌いの皇太子にあてがわれたアイナノアは、まさに嫌いを具現化した象徴を掻き集められた女性像だったために、より強固な女性嫌いへと発展させてしまったらしい。
アイナノアよ、本当可哀想な悪女だわ。
せめて、一度くらい一緒にベッドで過ごせば気持ちは変わったのかもしれないのに。
男性を虜にする技術が彼女にはあったのだから。
「妖精姫よ、孤城するのならば突入せざるを得ない。行け!」
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