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◇
「う…ううっ……。」
夢を見た。
漬け物石の下で俺が漬物にされている夢を。
俺の身体がすっぽり入るような樽に膝を抱えた状態で横たわり、上から大きな重い石が重ねられる。
硬くて痛い。
でも、石なのに冷たさはなくて、むしろ何だか人肌のように温かい不思議な漬物石だった。
それでもやっぱり次第に苦しくなってどうにか石をどかそうと身じろぎする。
重い…全く動けない…。でもこのままじゃ俺の身体中の水分が抜けて本当に漬物になっちゃうよっ。
焦って、焦って。ワーワー騒ぐ。
そうして不意に身体が軽くなる。
「おいっ、いてぇだろうが。」
低い声だ。おかしい、漬物石が喋ったように見える。
そんな事あるわけないじゃん。そうだよ、夢、これは夢だ。
なんて思っていたら急に目が開いた。
「あ、あれ?こ、ここって?」
「おう、いい度胸だ、呉羽。」
「は?」
声の主は俺の右パンチを甘んじて受けていた。
ふかふかのベッドに2人で横たわっている状態に内心ビビる。
状況から俺に抱き着いて寝ていたような格好の志摩さんは、スラリと長い脚を俺の素足に巻き付けたままでいた。
苦しさに志摩さんの身体を無意識に手で押していたらしい。行きつく先が右パンチで、たまたま志摩さんの頬に当たった…と思われる。
「うわっっ。」
俺は慌てて飛び起きる。それでも俺の身体がベッドから落ちる事はなかった。それほどさっきまで寝ていたベッドはデカいという事だ。
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