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これが当たり前に、日常茶飯事起こる出来事だからだろうか。
やっぱり従兄の言う事を聞いておけばよかった。都会は冷たくて情に薄い人間が多いから行くのは止めろ、と懇々と諭された。
同じ人間だろ、全部が全部そんな人間ばっかりじゃないって。なんて反論して田舎を飛び出した俺の脳裏に、それ見たことか、と訳知り顔で俺を見る従兄の顔が浮かぶ。
何はともあれ、今はどうにかしてこいつらから逃げないと。体格差は歴然としているし、何をされるか分からない。自分が何かヤバイ状況に陥っているのは分かる。
どうしよう、どうしよう。
何か手はないのか。
ジリッジリッと身体が引きずられていくのが分かる。
成人男性2人と自分では身体の構造から違うとでもいうのか。唯一自由になるのは足だったけれどそれだって2人組に持ち上げられたら何にもならない。
俺の身体は浮き上がり、コントでおなじみな空中自転車を披露してしまうかも知れない。
そもそも、右も左も分からない状態で逃げても直ぐ捕まってしまうだろう。
それでもこのまま何処かに連れ込まれるよりは生還の確立が上がる『逃げて誰かに助けてもらう』という選択肢を選びたい。
一か八か。大人しくしていると思っている今、思いっきり騒いで暴れたらこいつらの隙を付けるかも。
そう思ったら善は急げ。思い切り息を吸い込むと、俺は「助けてっ」と叫んだ。
「この野郎っ。」
アニキの方が俺の口を塞ぐのは早かった。
「助けて」の「て」の部分を言い切る前に俺の言葉は相手の手の中に吸い込まれ、ふがっと息を吐いた時のような音に変わった。
「てめぇ、舐めた真似してんじゃねぇよっ。」
さっきまでよりも怒気を強めた2人に恐怖心を抑え込んで、俺は最後の足掻きとばかりに身体を捻って口元に隙間を作るとガブリとアニキの手に噛みついた。
「いてぇぇ!!」
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