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祈るような思いでジッとしているとバタバタと複数の人間の足音が聞こえた。
荒々しい靴音は十中八九あの2人組のものだろう。
ふー、ふー、と息を潜めていた俺の耳に絶望の声が聞こえる。
「あっ!アニキっ、いました。ここにいましたぜっ。」
見つかった!と思った瞬間立ち上がってもう一度逃げようと思ったけれど、一度しゃがみ込んだ身体はすんなりと動いてはくれなかった。
ガクンッと膝が笑って、動けない。自分の身体の事なのにどうしたら良いのか分からない。
「てめぇ、さっきはよくもやってくれたなぁ。」
「穏便に済ませてやろうって俺たちのキモチをコケにされたわけだしぃ。もう、どうなってもいいよ、な。」
俺が動けなくなっている事が分かったのだろう。弟分は未だに怒りが収まらないようだったが、アニキの方はそれ以上にニヤニヤとした下品で醜悪な笑みを浮かべていた。
目つきも殺気よりも粘着質じみた気持ち悪さがあった。
「や…だ。い、、やだ……。」
プルプルと震える声で吐き出した言葉を拾ってくれる人なんていない。
ニヤつく笑いを隠そうともせず俺に手を伸ばす2人から何とか逃れようと後ずさった。
「や…やめ……。やだ、よぉ……。」
もうダメだっ。
瞼をギュッと握ってその瞬間に備えた俺の耳に、救世主の声が聞こえた―――。
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