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1. それは衝撃的な
「おいっ、てめぇ何も言わねぇで通り過ぎるたぁ、どういう了見だ。」
「あ~あ~、見て下さいよ。アニキの腕、もしかして折れたりしてるんじゃないですかぁ。」
「あ、いたたたたっ。」
「あ、アニキ!腕がぶらぶらしてますぜ。折れてるっ、折れてるよっ、これ。」
「あ~~~いてえぇ。てめぇ、さっき俺とぶつかったよなぁ。」
人の往来が激しい道を俺の周りだけ人が避けて通る。
目の前で喚いているチンピラ風情の二人組は以前TVドラマで見たような柄の多いペラペラのシャツを着ていた。ジャラジャラとした金のチェーンのネックレスが得意げに光輝いていて、頬に傷がある男の風貌もまた、ふた昔前の昭和風情で、俺はある意味感動して男の顔を見ていた。
「ああ?何だぁその面はぁ。何か文句あんのかよ。このオトシマエどうつけてくれんだぁ、おら。」
(うわぁ、煽り文句もレトロだよぉ。)
土曜の昼下がり。空は快晴で雲一つない。新緑が眩しい季節なだけに、街中はどこかへ出かけようと繰り出す人で溢れていた。
今日は連休の初日という事で、普段の週末よりも人出が多いのかも知れない。モーゼの十戒よろしく俺の周りだけ奇妙な空間が出来ていた。
足を止めて見物しようとして彼女に袖を引かれている男の姿が目の端に見える。
「オラオラ、見世物じゃねぇんだぞ。」
弟分の男が周りの人間に威嚇する。こんなセオリー通りのハプニング。本当にあるんだなぁと俺はやっぱり目の前の男を見ながらどこかぼんやりと思った。
「おい、何か言ったらどうだ。ほら、ちょっとこっちに来て色々話そうぜ。」
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