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「久しぶり。大きくなったわね」
新聞の勧誘や宅急便の類いだろうか。そう思ってドアを開けると、俺の部屋の前に立っていたのは、見たこともないような美人だった。
つやつやと輝く長い黒髪が、赤いワンピースによく映える。
裾は下品にならない程度に短く、上はノースリーブ。すらりとした手脚が、これでもかというくらいに強調されていた。
適度に豊かな胸は、スレンダーな体型とも不釣り合いにならない程度だし、細い腰つきにも、華奢という印象は感じられない。全体的に、とても大人な雰囲気の女性だった。
しかし、よく顔を見れば美しいだけでなく、明らかに若さも漂っている。童顔とは違う、年相応の『若さ』だ。
学生ではないにしても、大学生の俺と同じくらいの年齢なのだろう。
最初は『見たこともないような美人』と思ってしまったが、第一声が「久しぶり」なのだから、知り合いのはず。もちろん現在のではなく、遠い昔の知り合いなのだろう。
ずっと会っていなかった同級生なのか……?
そんな俺の戸惑いを見て取ったらしく、彼女はフフフと笑いながら、自己紹介する。
「亀田鶴子よ。……と言っても、私の名前なんて覚えてないでしょうけど」
「いや、覚えてる」
俺は反射的に、そう返していた。
亀田鶴子。
亀田という苗字は結構ありふれているし、鶴子という下の名前も、そこそこ珍しいものの「不自然ではない」という程度だろう。ところが二つ合わさると、非常識のレベルが格段に跳ね上がる気がする。
一体全体どこの漫画のキャラクターだ。親は何を考えて、こんな命名をしたのか。
昔はそんなことも思ったが、なるほど、こうやって「一度覚えたら忘れない」という強い印象を残すためだったのかもしれない。
ただし、俺が彼女の名前を覚えていた理由は、名前そのものの奇妙さだけではなかった。あれは、まだ俺が小学二年生だった頃……。
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