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タケル君じゃない?
#1
「倉上タケル君じゃない?久しぶり」
ある休日、横断歩道で立ち止まっていると、突然、女子に声をかけられた。
振り返るとそこには、目を疑うほど可愛い、同じ歳くらいの女子が立っていて、目を細めて僕を見ていた。
あまりに可愛いので、彼女は若手の女優で、どこかにカメラがあり、テレビ番組でドッキリをされているのではと辺りをキョロキョロしたくらいだ。
「何キョロキョロしてるの、タケル君」
「えっとぉ、タケルだけど、人違いじゃないですか?」
彼女は笑顔のまま目をくりくりさせて言った。
「じゃあこう言えばいいかな。第三村越高校3年1組のブサイクが、全身リノベーションして変身しました。どう、わかった?」
クラス1のブス・・・。
それは、白川柚しかいない。
全身リノベーション?
・・・つまり、整形か。
それにしても、どこをどう見ても、まったく別人だ。
白河柚は、みんなからいじめにもあっていた子で、不登校も繰り返していた。いつも暗い顔をして、一重の重たい瞼から恨めしそうにみんなを見ていたのを覚えている。
ここにいるチャーミングな女子が、その柚だなんて。
「信号、青だよタケル君。渡るでしょ」
僕は狐につままれたように、白川柚と名乗る女子と並んで横断歩道を渡った。
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