信じた?

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信じた?

#2  僕と白川柚は、横断歩道を渡った場所にほど近いカフェの席で向かい合って座っていた。  というのは、横断歩道を渡った後、もし時間があるなら話がしたいから、お茶しないかと彼女が誘って来たからだ。  僕は、ユニクロへ行ってヒートテックの下着を買おうと思っていたくらいだったし、本当に柚かどうかを見極めたいという好奇心も手伝った。  例え人違いだったとしても、可愛い子とお茶できるなんてラッキーな状況は、そうあるはずはない。  それにしても彼女は、誰なのか。  席に向かい合っても、僕は疑心暗鬼なままだった。 「久しぶりだね。やっぱ、驚くよね」  席に着くと、彼女は真っ先にそう言って、大きな二重の目で僕の目を覗き込むように見た。彼女の目は完璧に美しく、カラコンもしているせいもあるかもしれないが、そのアーモンド型の大きな目に吸い込まれそうだ。  あまりにじっと見るので、僕は恥ずかしくなって視線を逸らし、水の入ったコップを手にしてひと口飲んでからやっと言った。 「白川柚って確かにクラスにいたけど・・・」 「こんなに可愛い子じゃなかった。史上最悪のブスだった、でしょ」 「いや、あのう・・・」  本人だとしたら、そんなことはとても言えない。  事実すぎて。  彼女は僕の反応を楽しんでいるようだった。  彼女に尋ねた。 「ちょっと質問していい?」 「うん、何でもどうぞ」  本人でなければわからないことをいろいろ聞いてみた。学校のこととか、僕の記憶に残っている柚自身ののあの頃のことだ。  柚は、躊躇することもなく、スラスラと答え、すべて当たっていた。 「あとは言いにくいだろうから、こっちから言うね。私は当時、史上最強のブスで、みんなからいじめられていた。白河柚じゃなく、白河クズって呼ばれていて、太っているから運動会の徒競走ではいつもみんなの笑い者だった、どう、これで私が白河柚だって、信じた?」  彼女の言うことはひとつも間違いではなかった。しかし、だからといって、まだ本当には信じきれてはいない自分もいた。  あの頃のクラスメイトなら、みんな知っていることだからだ。 「でも、違いすぎるよ。別人だもの」 「韓国の整形はすすんでるからね」  そう言われ、整形手術の4文字が頭に浮かぶ。 「ひょっとして」  柚は大きく頷く。 「そう。全身リノベって言ったでしょ。韓国で10数回整形したのよ。かなり理想に近くはなったと思う」  柚はイタズラっぽく笑って続けた。 「結局、5,000万円かけたな。それくらいかければ、誰だって可愛いなれるってこと」 「5,000万!?すごいね。どうしたの、そのお金」  開いた口が塞がらないとはこのことだ。  謎はさらに、深まった。
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