9.彼の部屋、火照る体

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  「そ、そういうことで、お願いします」 「ホント?」 「……はい」 「良かった、めちゃくちゃ嬉しい」 そう言って佐田さんは笑った。まるで子供みたいに。 だから、つられてこちらも笑みが浮かんだ。 嬉しいのは私もだった。 「あっ……そうだ、ひとまず戻りませんか。高木さん心配してる、かも……」 ふと、すぐ戻ると高木さんに言ったのを思い出し、方向転換してドアノブに手を掛ける。 しかし、私の横を佐田さんの手が通っていき、目前のドアにその手をついた。 「待って、まだ足りない。もう少しだけ二人で居たい」 振り返る間もなく、今度は後ろからがっつりホールドされ、耳のそばで囁かれる。 「で、でも」 「駄目?」 「……い、いえ……」 駄目とかではない。 高木さんが心配していないか、気になっているだけで。 と言うかこれは……いわゆるバックハグで、自分には一生無縁のことだなんて思っていた。 でも実際自分の身に起こると、緊張所の騒ぎじゃないらしい。 心臓はバクバクしていて破裂しそうだし、体は硬直して全く動けない。 そんな時だった。スマホの通知音が鳴ったのは。 それは佐田さんの方からで、すぐそばでスマホを操作する気配がした。 誰かからのメッセージに返信をしたのだろう。 それはそうと……もう少しっていつまで? 「小都里ちゃん、緊張してる?」 「へ? あ……えっと、しない方がおかしい……っていうか佐田さんはしないんですか?」 「してるよ、さっきからずっと」 本当に? やること全て慣れていそうだし、普段涼しい顔をしている人が。
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