996人が本棚に入れています
本棚に追加
しかし思い返してみれば、かなり大胆な発言をしたんじゃないだろうか。
ほんの少し前の私なら、考えられないような……。
今更自分の言葉に恥ずかしさを覚えて、慌てて体を離す。
「も……もう大丈夫です! ありがとうございます」
ああ、今絶対顔が赤い。
見られたくなくて、手の甲で隠す。
「……あー、うん」
佐田さんは何故か困ったように頭を掻いた。思わずとは言え体を押して離すなんて、嫌な感じだと思われたんじゃないだろうか。
「す、すみません、押してしまって」
「いやそれはいいけど……生殺しだなって」
後頭部から首元に手を下ろして佐田さんは言った。
私は一瞬固まるも、何となくどういう意味かを理解して再び顔に熱が集まる。
生殺しって……。
「それはそうと、小都里ちゃんさ」
ふいにそっと右手を軽く握られ、目線を上げる。
「付き合っても敬語?」
「え?」
「出来たら敬語じゃなく、ふつーに話してほしいんだけど」
「あ……」
そうか。佐田さんはそれを望んでるんだ。
ずっと敬語でそれが当たり前になっていたから、考えもしなかった。けれど……。
それに慣れていたから。いざそうしようと思ってもなかなか難しい。
「ど、努力します」
「うん……って言ってるそばから駄目じゃん」
ハハッと、佐田さんは片眉を下げて笑った。
確かに、その通りだ。
最初のコメントを投稿しよう!