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「……それだけ?」
「それだけ、って?」
佐田さんの質問に、伏せていた瞼を上げて質問で返す高木さん。
高木さんに報告しようということになって、食後佐田さんからしてくれたはいいけれど、高木さんの反応にどうやら佐田さんは困っているみたいだ。
「や、驚くかと思ってたから」
「驚くもなにも、昨日の忘年会での二人見てそんな気はしてたから。前に、知らない間に付き合ったのかと思って小都里ちゃんに聞いたこともある」
「そうなの?」
高木さんから私へと顔を向けた佐田さんに、コクコクと頷く。
「ルームメイトが付き合うことに関して俺はとやかく言うつもりはないし、いいと思ってるよ。遊びじゃないならの話だけどな」
表情を変えず、真っ向から佐田さんを見て高木さんは言った。
暗に、本気かと問われているのだと察知して佐田さんを伺う。
「遊びじゃない」
佐田さんは同じように真っ直ぐ視線を向け、強い口調で答えた。
そこで沈黙が訪れ、ピリッと張り詰めた空気に固唾を飲む。
「分かった」
数秒後、高木さんが微笑んだのを見て、私はホッと胸を撫で下ろした。
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