9.彼の部屋、火照る体

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  良かった。あの沈黙の間はどうなるかと、ちょっとヒヤヒヤしたけれど。 「そういやあれから藤子さん、大丈夫だった?」 思い出したように佐田さんが話を切り出した瞬間、ゴトッと鈍い音がした。 高木さんが手に持っていた陶器のカップを落とした音だ。 「……やべ」 「何やってんの、ヒロくん」 「悪い、手が滑って……」 「私、台拭き取ってきます」 低い位置から落下したからか、幸いカップは割れずに済んだものの、中のコーヒーが溢れてしまっている。 佐田さんがティッシュで拭いている間に、私は急いでキッチンから台拭きを取って戻った。 「ごめん、小都里ちゃん」 「いえ、大丈夫です。それより怪我しないで良かったです」 申し訳なさそうにする高木さんに笑顔で返して、最後綺麗に拭き取り、再びキッチンへ。 「はあ……」 台拭きを流水ですすいですると、こちらにまで聞こえてきた重苦しい溜め息。 気のせいだろうか。高木さんの様子が変だ。 物を落としたり、溜め息をついたり。 「……で、何だっけ?」 私が座り直した所で、高木さんが口を開く。 「藤子さん、あれから大丈夫だったかって話」 「あ、ああ……藤子な。うん大丈夫、全然。問題なし」 否、気のせいじゃない。 高木さんが藤子さんの名前を聞いて、あきらかに動揺している。 佐田さんもそれに気付いているのか、じっと高木さんを見据えている。
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