9.彼の部屋、火照る体

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  視線を上げると、小型のオープンシェルフが目に入った。 佐田さんは植物が好きらしい。そこにもミニ観葉植物が、二つほど飾られてある。 後はちょっとした小物と、数冊の本が並んでいる。 「本、読むの?」 「あーうん。ほとんど仕事関係だけど。意外?」 「ちょっとだけ……」 「やっぱり、よく言われる」 後は趣味とか色々と言うので、何の趣味かと訊けば、インテリアと答えが返ってきた。 なるほど。この部屋は趣味から生み出された空間か。通りで、シンプルながらオシャレなわけだ。 佐田さんのセンスもあるのだろうけれど。 他にも映画鑑賞が趣味だと知った。 よくプロジェクターで鑑賞したりするらしい。 そう言えば、私は彼のことをほとんど何も知らないまま付き合ったのか。 誕生日、血液型、産まれはどこなのか。そんな基本的な情報さえも。 「小都里ちゃん、誕生日いつ?」 まさに訊ねようと口を開いたタイミングで、佐田さんから質問され、瞬間的に振り向くと。 「ん?」 何? と、首を傾げられた。 「あ、いや……」 考えていることが伝わったのかと驚いたが、どうやらたまたま、訊かれたようだ。 「四月。四月の二十八日」 やや下を向きつつ答えると、そうなの? なんて驚いたような声が飛んできた。
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