9.彼の部屋、火照る体

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  「一日違いだわ、俺と」 どうして驚いたのかという疑問は、その言葉ですぐに消えた。 「一日違い?」 「ん、二十七日だから」 なんということだ。 私の前の日にこの世に産まれたなんて、天変地異でも起こったかのような衝撃だった。 私がもう一日早ければ、あるいは佐田さんの方がもう一日遅ければ、一緒だったかも知れない。 目前の彼をレンズ越しに見ながら、それって奇跡に近いんじゃないだろうかと、思った。 「……どれくらいの確率なんだろ、恋人と一日違いって」 「んー、宇宙人目撃するより低かったりして」 本気かどうか分からない返しにはちょっと……いやかなり呆けて、堪えきれずに吹き出す。 「宇宙人目撃するよりって」 「知らんけど。でも……そうと知れば、来年から一緒に祝えるんじゃない?」 振り向けば、顔を傾けた佐田さんのとびきり甘い笑顔が映った。 その破壊力ときたら凄まじく、私はただただ顔を赤くして、静かに頷く。 一緒に……か。 ふと今年の誕生日はどうしてたっけと思い出してみると、姉が祝ってくれた後、暗い部屋で一人アニメを見て過ごしていた自分が居て。 次もまた、当たり前のようにそうやって過ぎていくんだと疑わなかった。 だけど、来年からは違うようだ。 好きな人との約束が一つ出来た。 そんな些細なことに喜びを感じて、噛み締めていると。 「小都里」 と、やけに温度のある声で名前を呼ばれた。
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