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「一日違いだわ、俺と」
どうして驚いたのかという疑問は、その言葉ですぐに消えた。
「一日違い?」
「ん、二十七日だから」
なんということだ。
私の前の日にこの世に産まれたなんて、天変地異でも起こったかのような衝撃だった。
私がもう一日早ければ、あるいは佐田さんの方がもう一日遅ければ、一緒だったかも知れない。
目前の彼をレンズ越しに見ながら、それって奇跡に近いんじゃないだろうかと、思った。
「……どれくらいの確率なんだろ、恋人と一日違いって」
「んー、宇宙人目撃するより低かったりして」
本気かどうか分からない返しにはちょっと……いやかなり呆けて、堪えきれずに吹き出す。
「宇宙人目撃するよりって」
「知らんけど。でも……そうと知れば、来年から一緒に祝えるんじゃない?」
振り向けば、顔を傾けた佐田さんのとびきり甘い笑顔が映った。
その破壊力ときたら凄まじく、私はただただ顔を赤くして、静かに頷く。
一緒に……か。
ふと今年の誕生日はどうしてたっけと思い出してみると、姉が祝ってくれた後、暗い部屋で一人アニメを見て過ごしていた自分が居て。
次もまた、当たり前のようにそうやって過ぎていくんだと疑わなかった。
だけど、来年からは違うようだ。
好きな人との約束が一つ出来た。
そんな些細なことに喜びを感じて、噛み締めていると。
「小都里」
と、やけに温度のある声で名前を呼ばれた。
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