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「大体コトちゃんはさ、自分の事卑下し過ぎなんだよ」
優しい口調でありながらも厳しさを含んだ言葉には、眉を潜めて首を傾げる。
「そうかな……」
「そうだよ、中学生の頃なんてコトちゃんが知らないだけで結構男子に人気あったし、面白い事も言うよ? たまにだけど」
「いやいや、まさか」
思わずハハッと笑う。
「人気あったなんて無い無い、絶対。昔から冴えないし、面白い事も言えてないし」
「ほらまた、そうやって卑下する。それにね、メイクしたりファッション変えたりしたら自信も持てて、人にも積極的になれるよ、絶対」
人気があっただとか、面白い事を言うだとかは一旦端へ置いといて。
専門学校を卒業して、美容部員になったお姉ちゃんの言う事だから一理あるとは思う。
けれど果たして本当にそうだろうか。
メイクしてファッション変えたら、人に積極的になれるなんて……。
そんな魔法みたいな事、本当にあるのかな。
いささか疑問であり、信じ難い。
「……それでも私はいいや、このままで。私はアニメと好きなキャラクター愛でてるだけで十分。それにそばにお姉ちゃんが居てくれたらそれでいい」
言い放って、酎ハイをぐいっと煽ったら。
「あー……」
こめかみを掻きながら苦笑する姿が目の端に映り込んだ。
やってしまった。
今ので、さすがに呆れられたに違いない。
お姉ちゃんは私を心配して言ってくれているのに。
そう思ってお姉ちゃんに謝ろうとした私はこの時、大きな勘違いをしていたらしい。
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