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放課後の告白
「ぎゃあっ!」
「え‼」
「ぎいィやあぁァぁ~っ」
「お、おい」
あの甘ったるい麗羅の声がどうすればこんなに醜くなるのか、
へしゃげた叫びが屋上に響き渡った。
「い、いだいいだいぃぃっ! たすけて、だすぅげて舜んんんん」
伸ばしてきた手をふり払う。
床に転がりグニョグニョグニョグニョ
まるで逃げ遅れた夏の蚯蚓だ。
俺は目の前に立ち尽くす花房麗奈を睨みつけた。
「おまえ、いったい何をしたんだ」
「し、知らない私」
「嘘つけ! おまえの手紙を破った途端こうなったんじゃないか。やっぱりおまえ」
言葉にすると余計に恐怖が増してくる。
七日前に俺達は進級し、同じクラスになった花房麗奈は真逆の意味で注目の的になっていた。
(あいつをイジメた奴って現在もみぃんなヤバいことになってるらしいよ)
(ひょっとして母親の事故死ってのも)
でも誰もハナブスをいじらない。
表立ってはな。
ただの噂だろうと思ってはいても、自分以外の誰かが早く「ことの真相」を確かめてくれないかと窺っている状態だった。
「何であたしとあいつの名前がかぶってんのぉ?」
麗羅は最初からハナブスのことが気に食わなかったらしい。
「うっ」
異臭に鼻と口をふさいだ。
「やぁああ見るなぁぁあっち行けぇぇ~」
濡れたスカートを押さえた麗奈がハナブスに白目を向いている。
終わったな。こいつ。
昨日まで、学校一位の自慢の彼女だったのに。
「ちがうよ。私、なんであんなこと言われてるのか分からない。そんな力持ってるわけないじゃん、あったらとっくに」
なんかヤバいこと言いやがって。
「私はただ‥‥‥ただ今日、あなたに気持ちを伝えたくて」
「来るなっ!」
冗談じゃない。
なんでこんなことに巻き込まれなきゃなんないんだよ。
俺は一気に階段を駆け下りた。
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