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夢をみていた。
夢の中で、タロウが元気いっぱいに、僕の元へ駆けてくる。
「タロウ!」
僕がタロウの名前を呼ぶ。
タロウは、そのまま僕に勢いよく跳びつく。
僕は、その勢いに負けて、緑の芝生の上に倒れ込んだ。
タロウは、倒れ込んだ僕の顔をぺろぺろと舐め回した。
「タロウ」
僕はもう一度タロウの名前を呼ぶと、身体を起こしてタロウをそっと抱きしめた。
タロウの暖かな温もりと、犬ならではの独特の匂いを感じる。
「タロウ……」
もう一度名前を呟いた時、僕は夢から覚めて、目を開いた。
不思議と悲しい気持ちはなくなっていた。
ただ、僕は静かな心で思った。
この先、もう犬は飼わないと。
僕の犬はタロウだけだと。
おしまい
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