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いいな、いいな。あったかいおうち
室内で飼われているペットの犬が、トロンとした顔をこちらに向けて、ワンと鳴く。
(いいだろう?羨ましいだろう)
ワンワンと言っているだけなのだが、ノラのボクからしたら、尻尾をフリフリして優越感に浸っているパグにしか見えない。
ボクは秋風が毛並みを冷たくする寒さの中、ワンワンと吠え返す。
(可愛がられているのは今だけだ)
うっすらとボクが映る。白い毛並みの首もとにはかつてつけられていた首輪のあとが残されている。ノラになって思う。
ペットのレトリーバーだった頃が、幸せだったと・・・・
「あら、やだ!!野良犬は来ないで」
パグの家の人がボクの鳴き声に気づき、冷たい外に出てきて、目くじらをたてている。パグはその光景を暖かい部屋で鼻をフンとならして聞いているのだろう。
ワンワンワワン!!
犬語は通じないとわかっていても、ボクは吠えずにはいられない。
ちゃんと最期まで可愛がってあげてね
ボクみたいに、途中で飼えなくなったからって段ボールに入れないでね
「ほら、あっち行きなさい!!」
手のひらでしっしとボクを追い払おうしている。ノラの犬には、こういうことは良くあることだと、先輩ノラ犬に教わっていた。
くぅぅぅん
もしかしたらと思いつつ、かわいい声を出してみるけれど、やっぱり飼い主にはなってくれないようだ。
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