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お礼
ふたりで乙姫が暮らす家に向かった。乙姫の家は高級マンション「竜宮ヒルズ」の最上階だった。この竜宮ヒルズはこの付近で1番高い建物だ。部屋に行くと眺望が素晴らしく、どこまでも続く地平線が見え、地球が丸いことを実感した。
三郎は乙姫に盛大に歓迎された。手作りのご馳走でもてなされ、ブームのスイカゲームで盛り上がった。カツラをつけた乙姫が披露してくれたマツケンサンバは最高のキレだった。三郎は「なぜマツケンサンバ?」と思ったが、野暮なことは口にしなかった。その代わりに三郎の体も自然と踊っていた。
美人なのにお笑いもイケる天然の乙姫に魅力を感じていた。三郎は養殖よりも天然派だった。お互いが「三郎さん」「乙姫さん」と呼ぶようになるまで時間はかからなかったのだ。
しかし、何時間か経つと三郎は家に残してきた母親のことが気になって、だんだん楽しめなくなってきた。すると、乙姫は暗い表情で心配そうに三郎を見つめた。
「三郎さん、もう帰りますか?」
「うん、そろそろ帰るよ」
乙姫はマンションの入口まで見送りに来てくれた。来たときとは異なり、外は夕焼けが眩しかった。そして、光の中に立つ乙姫は一層きらびやかに見えた。
「三郎さん、じゃあね」
「乙姫さん、ご馳走さま。楽しかったよ」
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