10 冒険者はじめました!

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10 冒険者はじめました!

やっとのことで登録を終えた私たち。 マイちゃんは自分の冒険者カードを何度も見てはニコニコと笑顔を見せていた。わかるよ!カードは集めてなんぼ!マイちゃんのそのカードがいつかウルトラレアになればいいね!とソシャゲ脳の私も嬉しくなってくる。 どうやら一番上のSランク冒険者だとプラチナカードというのになるらしい。白く輝くカードになるようできっとその白き輝きはマイちゃんに良く似合うだろう。 登録も済み、とりあえずその日はギルド内にあるゲストハウスに泊めてもらうことになった私たちは、イーリスに昼食をおごってもらうことになった。遠慮なくギルドの食堂でおいしそうにサンドイッチを頬張るマイちゃん。 イーリスはもちろん他の冒険者やギルド員たちもメロメロになっていた。もちろん一番メロメロなのは私だ! そして午後からはいよいよ冒険者としての活動を開始した。 常時依頼のダンジョンの低階層にいるゴブリンとスライムからとれる小魔石の買取依頼を行うことになった。なんでも現在、小魔石の買取価格倍増中らしい。何故かここ最近この小魔石が大量に買い占められているため不足しているのだとか。 普段は1つ小銅貨が5枚。それが倍の銅貨1枚になるという美味しい仕事らしい。とは言え新米冒険者ぐらいしかやらない依頼なので枯渇状態は暫く続きそうと言っていた。 丁度いいから狩れるだけ狩ってやればいい。そう思っていた。小魔石はこの世界では魔道具の燃料代わりに安く取引されているため必需品ではある。 ついでにこの世界の貨幣価値も簡単に聞いてみる。 単位はリヤと言うらしい。 小銅貨が10リヤ、銅貨が100リヤ、銀貨が1000リヤ、金貨が1万リヤ、白金貨が100万リヤとのこと。大体食事が500~1000リア程度なので日本円より少し価値が高いかもしれない感じであった。 10リヤ以下の小銭は無いため10リヤ以下の物については適当にまとめ買いなどをするという。結構大雑把な世界だなと思った。 ◆◇◆◇◆ 「ここが……ダンジョン!」 マイちゃんはイーリスに連れられギルド奥にある入り口からダンジョンの入り口に立っていた。 そもそもこの世界でダンジョンは貴重な資源であると共に放置しておくと中の魔物が溢れ出てしまう、異世界あるあるな魔物暴走(スタンピート)を起こすためそこに冒険者ギルドを作り、周りに街ができるという。 いざとなればこのダンジョンから溢れ出た魔物たちを手前の例の訓練場で何とか食い止めたいとのことだ。まあそんなことはここ何十年も起きていないということだが、その為にも魔物を狩り続けるというのは重要なことらしい。 ということで、マイちゃんのそばにはイーリスが立っている。もちろん私は背中にいるのだが……やっぱりイーリスは付いてくるのか…… 「じゃあ私が先に入るから、マイちゃんはついてきてね!」 「うん!」 さっきからダンジョンの入り口をを見ながらワクワクが止まらないマイちゃんはイーリスに従って薄暗くなっている階段を下りていく。 くそっ!イーリスがいなければ今頃初のダンジョンをマイちゃんと楽しくおしゃべりしながら入ることができたのに……私は今にも飛び出して後ろからその脳天をかち割ってやろうかと思ってしまう。 まあいい……こうやってマイちゃんを引率するのも今日だけだ。明日には断るようにマイちゃんに言っておこう。そう思って今は我慢する私。というかマイちゃんと思いっきりおしゃべりしたい…… 「よし!早速スライムが出てきたわ!まずは私が……って待って!」 ダンジョンの最初の階に降りてすぐ、うっすら光を放っている壁に照らされ、ふにふにしたタイプのスライムが2匹ほど見えた。 イーリスが何やら話しているが、私は気にせずマイちゃんに『やっちゃえマイちゃん』と小さく声を掛けるとすぐに走り出すマイちゃん。私もすぐに背中から抜け出るとマイちゃんのお手てに収まった。 そしてスライムをバシンバシーン!即殺である。 イーリスがすぐに駆け寄ってくる。 「マ、マイちゃん?マイちゃんが強いのは分かってるけど、まずは色々教えたいから次は私が先に見本見せるからね?」 「うーん、マイあんなのこわくないよ?」 首をかしげるマイちゃん。尊い。 「う、でもね?これからもっと強いのも出てくるのよ?ゴブリンとか」 「ゴブリン?あっ!あれ?」 マイちゃんがゴブリンと定番の魔物名を口ずさみながらきょろきょろすると……いました!あれが……まごうことなきゴブリンです。いや、ちょっと気持ち悪いな。リアルに緑の小人を見るのはかなりつらいです。 そんな私の心配も他所にマイちゃんはまた走り出していた。 あっちょっと私だめかも?ギャー!そして私の足(柄)はその緑の化け物の脳天を砕き、その命を刈り取った……即『浄化』を発動させたのは言うまでもないだろう…… 『ぴっこぴっこぽっぴぴ~!』 ――スキル『精神耐性』をゲットしました。 ―――――― 『精神耐性』どんまい…… ―――――― 私は女神に珍しく感謝した。ゴブリンに削られた心の傷がちょっとずつ癒されてゆく。異世界転生物でも初めての人型を狩る時はこういう描写あるもんね……分かるわ。とは言えスキルの影響でもうほぼ何とも思わなくなっている。 そんな中、マイちゃんがイーリスに言われ、嬉しそうにゴブリンの胸をダガーで切り開いていく。ああ、魔石ね……うんうん。ゲットだね良かったねー。精神的にもう気持ち悪さはないんだけどね。なんだかこうモヤっとする。 私は気を取り直しつつマイちゃんとついでにイーリスも一緒にダンジョンを進んでいく。そこまで複雑ではないものの結構広い。まあ迷うほどではないので次からはイーリスはいらないだろう。 その後はゴブリンやスライムの群れと遭遇するが、そのすべてを屠ってゆくマイちゃんと私。イーリスの出番は大量のゴブリンを狩った後の魔石の取り出し作業を手伝ってもらう程度であった。 途中で私も少し油断していたのか『突撃』や『影の手』を使ってしまいホイホイと魔物の群れを倒していくうちに、イーリスが私に興味を持ったようだ。 「マイちゃん、そのモップってなんか凄いよね。魔道具?魔剣?」 そしてイーリスが私に手を伸ばし触ろうとするのでマイちゃんが「だめっ!」と慌てて声をかけたのだが、それは時すでに遅し……バリバリとイーリスへの呪いの電撃?がほとばしりへたり込むイーリス。 「ママはのろいのモップなの。マイいがいさわっちゃだめなの」 『マイちゃんだめって言ったのにね。ほんとバカなやつ、あっ……』 「今の……モップ?」 地面にへたりこんだままのイーリスがこちらをじっと見ている。 やっちまった…… うーん。もう開き直って説明するか。まあイーリスなら悪いようにはならないだろう。 『マイちゃんがお世話になってますぅ~』 「やっぱしゃべった!」 そしてダンジョンに座り込んだイーリスに説明を始めた私。 ついでにあのハゲ男爵のことも報告したら「明日には潰す!」と鼻息を荒くしていたのでまあざまーである。というかこのしゃべり方がイーリスの素なのであろう。 何はともあれイーリスは他に吹聴することもないようだが「マイちゃんがモップを母親に見立てて悲しみに暮れているってことじゃなくて安心した」と言う謎の言葉を発していた。 なんのことだかさっぱりだ。 とりあえずはマイちゃんの強さの秘密が分かったという事で「明日からは安心して送り出せる」と変に納得していたイーリスと共に、さらに狩りを続けるのであった。まあ結果オーライ? そして最後には「ママの座はお前に譲るよ!私はそう、お姉ちゃんだ!」と言われたが、そもそもママの座は最初(ハナ)から私の物だしお姉ちゃん枠は不要だ!ということを強く言いたい。 そんなこんなで魔物を一日中狩りまくった私たち。 『ぴっこぴっこぽっぴぴ~!』といつものように聞きなれた粗悪なファンファーレでレベルが3つ上がる。 ―――――― 『強化』あなたをつよくするそのあいで! 『火弾』もえつくせ! 『収納』いいのいいの。もうないないしましょーね。 ―――――― 一つ目の『強化』はアクティブだった。 『怪力』と被るかと思ったが、発動させても何もならない感じだったのだが、少ししてからマイちゃんが「ママ、ちょっとカラダあつい」と言ったので、ああそういうことかとマイちゃんにゴブリンをひと叩きしてもらった。 予想以上に粉砕された緑の体に穢されたマイちゃんを即座に『浄化』した。どうやらこっちはマイちゃんを強化するためのスキルらしい。何気に活用しがいもあるかもしれない。マイちゃんには手加減を覚えてもらう必要はありそうだ。 そして『火弾』により文字通り火の玉が思うように飛ばせるようになった私。魔法キター!と使いまくってたらちょっと魔力が抜ける感じがしたので自重した。燃費は悪そうだ。 そして最後の『収納』にはさすがにテンションが上がる。 それまでイーリスがギルド支給の魔法袋に全部入れていたのだが、早速狩り終わった大量のスライムの小魔石を片っ端から収納していく。魔法袋を広げマイちゃんが回収してくるのを待っていたイーリスのあの泣きそうな顔は少し可哀そうだと思った。 その後も狩りを続ける私たち。そしてマイちゃんのお腹が鳴ったところで今日の冒険は終了となった。よし!あとは戻って清算したらいっぱいマイちゃんをもてなすぞ! 来た道を戻りギルドのカウンターまで戻ってきた私たち。 早速カウンターの上に一応『浄化』しながら『収納』から小魔石の山を取り出す。イーリスも魔法袋から全て出し始めたのでついでにそっちも『浄化』する。ばっちいままだとマイちゃんが病気になったら困るからね。 そして数え始めるイーリス。隣には出発前にヘックと呼ばれたギルド員がやってきてその様子を心配そうに見つめる。ああ、イーリスってなんかいつも仕事してなそうな雰囲気出してたしな……色々と察してしまう。 「よし!こんなもんか!」 備え付けてあったメモ紙のようなものに数字を書き込むイーリス。 「あ、後はボクがやりますので」 「ああ。お願いね」 ヘックが別の魔法の箱のようなものを持ってきてカウンター上の魔石の山を回収すると、先ほどイーリスが記載したメモを受け取り奥へと入っていった。もしかしたら数えなおすかもしれないね。 「これが今日の報酬よ。マイちゃん頑張ったね」 「うん!ありがとうイーリスさん」 ペコリと頭を下げてお礼を言えるマイちゃん素敵!と私はその尊さに思わず『浄化』が漏れてしまった。イーリスの方もお礼を言われてデレデレしていた。ちょっと気持ちが悪い。 そしてカウンターに置かれた報酬を確認すると金貨が3枚。3万リヤとなる。一泊金貨1枚の近所にあるという高級宿に3日もとまれる!そんな金額が半日で稼げたのだ。 本当は宿屋に泊まってもよいのだが、ギルド、主にイーリスが好意で用意してくれたゲストハウスもあるし厄介になることにした。お金大事。 それにしてもやっぱり冒険者は生活も楽そうだ。この調子なら月に10回、半日程ダンジョンに潜れば金貨30枚。30万リアになるから普通に生活も可能だ。もちろん小魔石が枯渇している今だけなのだが…… その時はもっと稼げる下の階層にも行くべき?それは追々考えよう。 マイちゃんと冒険者しながらのんびりこの世界を二人旅するのは悪くない! だが、その時私は忘れていた。 あのことを…… 現在のステータス ―――――― 名前:ママ 種族:マイの不朽なモップ 力 70 / 耐 ∞ / 速 45 / 魔 50 パッシブスキル 『痛覚耐性』『視界確保』『念話』『不朽』『怪力』『精神耐性』 アクティブスキル 『浄化』『念動力』『影の手』『突撃』『棒術』『鑑定眼』『強化』『火弾』『収納』 称号 『マイちゃんの眷属(呪)』 ―――――― これ以前は過去話参照 『怪力』きんにく!それはまさにちからづよく! 『精神耐性』どんまい…… 『強化』あなたをつよくするそのあいで! 『火弾』もえつくせ! 『収納』いいのいいの。もうないないしましょーね。 ―――――― 一気に4つ上がったけど実はマイちゃんも上がったのよ!凄いよね!それは今晩じっくり検証しなきゃね!
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