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13 ほうれんそう
Side:マリア
「なるほど……では、マイちゃんには今日は上がってもらいましょうか」
「はい!それがいいですね!」
私は意気揚々とアシスさんの部屋から出る。
マイちゃんがなんと『浄化』持ち!あのママと呼ばれたモップは魔道具みたいだしとにかく有能なのは間違いないい!そう思ってアシスさんに報告した。アシスさんも関心していたのでこれでマイちゃんの正式採用は決定だろう!
まずはマイちゃんに今日は上がっても良いことを伝えよう。
彼女なら正式採用で一日1時間程度でお仕事は終わり、開いた時間で今日の様にブレイクタイムであの可愛い体を堪能できる。マイちゃんとずっと一緒にいられるのだ!私ははしたなくも鼻息を少し荒くしてマイちゃんの元へと戻るのだ。
◆◇◆◇◆
Side:ユイコ
「マイちゃん!今日はもう上がっていいって!」
執事アシスの元へ行ってきたというマリアちゃんが満面の笑みを浮かべマイちゃんにお仕事終了の意を告げられる。『浄化』で一気に終わらせたのでもうやることがないのだろう。
「もう終わり?」
「そうよ。マイちゃんの魔法でいっぱいお部屋の掃除が終わったでしょ?だからもう今日はいいんだって!あっもちろんお給料は減らないから安心してね!」
「わーい!」
その言葉にマイちゃんがマリアちゃんの足元に抱き着いて喜んでいた。
マリアちゃんは「ふふふ」と微笑みながらもその口元がだらしなく開いている。すでにマイちゃんに篭絡されているようだ。あとニーナちゃんが羨ましそうにしているのはどっちの意味だろうか。
本当は私も加わってマイちゃんを撫でまわしたいのだが、ヘレンちゃんとニーナちゃんがいるのでここは我慢で……いずれこの二人にも私のことを話す時はくるのだろうか。
そしてマイちゃんは居合わせたみんなに手を振って帰宅する。みんな笑顔だ。ここは良い職場だと改めて安心する。さて、この後どうしたものか……
『マイちゃん、この後どうする?』
時間が空いたのでマイちゃんに確認をする。本当は仕事終わりに昼食をと思っていたのだが、さっきのブレイクタイムでおやつもいっぱい食べていたし、きっとマイちゃんも今はそれなりにお腹いっぱいだろう。
「マイ、ダンジョンいきたい!」
「よし!ダンジョン行こっか。でも体は大丈夫?疲れてない?」
「マイはだいじょうぶだよ?」
「じゃあ今日もスライムとゴブリン叩きに行こうか!」
「うん!」
こうしてマイちゃんとダンジョンに乗り込んだ私たち。
冒険者ギルド内でイーリスが絡んでくるがマイちゃんの「きょうはママといっしょなのでだいじょう」と断っていたので安心する。
言われたイーリスはショックのあまりいつものカウンターの椅子にがっくりとうなだれていたが、普段からいないようなものだし大丈夫だろう。きっとヘックなんとかしてくれるだろう。
暫くスライムとゴブリンを狩りまくる二人。
『ぴっこぴっこぽっぴぴ~!』
――スキル『回収』をゲットしました。
ん?私はレベルアップのファンファーレに首をかしげたくなる。回収ってなんだ?収納とは違うのだろうけど……
――――――
『回収』ちょっとこれ、もらってくね?
――――――
相変わらず意味不明だ。
強奪とかそう言ったスキルでもないようだし……試しに落ちてる岩に使ってみる。何もおきないようだ。マイちゃんに使うのは……名前から言って大丈夫だとは思うけど……ちょっと不安が残るな。
私はゴブリンの魔石を的確に切り出して回収しているマイちゃんを見る。
ん?回収?
試しにまだ魔石を取り出していないゴブリンの亡骸に近づき、『回収』してみる。何もおきなかった。そして次に魔石を思い浮かべ再度『回収』を……ゴボリと音を立ててゴブリンから小魔石が飛び出してきた。
ちょっとグロい……
とりあえずはそう言う事か、と『浄化』した小魔石を『収納』した。
『マイちゃん。新しいスキルが出たよ!』
「やったー!ママ、どんなスキル?」
ダガー片手に喜ぶマイちゃん。ちょっと猟奇的な光景だけどそれもまたイイ!
私はまた回収前のゴブリンの亡骸その2に近づいて『回収』する。再度ボコリと音がして魔石がふわふわと……
「すごい!ませき、でてきたね!」
『凄いよね!』
私は調子に乗って『回収』を発動させ、心臓、脳と思い描くが……だめだった。どうやら無機質限定なのか?と思うが、女神のことだからワンチャン剥ぎ取りにくい素材限定の可能性も捨てきれない。
私はまだ見ぬ高級素材の登場を心待ちにして今は残りのゴブリンから魔石を取り出す作業に没頭した。
それから2時間ほど狩り続け、マイちゃんのステータスも上昇した。私は結局レベルアップはあれだけだった。しかし2時間ちょっとで大量の小魔石……今夜はまた豪勢に美味しい物をマイちゃんに食べてもらえそうだ。
『マイちゃん、そろそろ帰ってご飯にしようか』
「うん!マイ、きょうもいっぱいたべられそう!」
よしよし!子供はやっぱりいっぱい食べなきゃね!今日はどうしようかな?
冒険者ギルドに戻ると笑顔を携えたイーリスが出迎えてくれたが、私は無言でカウンターまで行って魔石を全部『収納』から出す。マイちゃんが「ただいまイーリスちゃん」と返事してたのでそれだけでもう十分だろう。
というかマイちゃんがいつの間にか『イーリスちゃん』って呼んでるな。何気に距離を詰めてきてるなあんちきしょう!私はイーリスに対する警戒心を上げていく。
そんなことを考えながら私が『浄化』を使って魔石の山を綺麗にしていたが、近くまでやってきたヘックが口をパクパクさせた後、震える手で小魔石の山を数えだした。
イーリスはまだマイちゃんにデレデレして使い物にならないが、どうせヘックが数え直すであろうからそれで良いのだ。
だが『浄化』を気軽に使ってたけど、貴重だというのなら使う場所とかは慎重に考えなくてはいけないだろう。多分ヘックは今、ギルド員として目の前で起こったことをどうしようかと悩んでいるように思える。
かなり挙動不審だ。
魔石を数えながらもその魔石と私を目が行ったり来たりしている。
ふわふわ浮かぶ私。マイちゃんはイーリスと話をしている。そしてキラキラとした光と共に魔石が曇りなき煌めきを放っている……ばれたよね?さて、どうしたものか……
『ヘックさん』
「うわっ!」
ふよふよとヘックの近くに近づき静かに声を掛けたがその声に驚くヘック。ギルド内は少しざわつき注目が集まってしまった。
「し、失礼しました……」
ヘックがぺこりと頭を下げるとギルド内のざわつきは消えた。
『守秘義務って知ってる?』
「ひっ」
今度は本当に小さな悲鳴を上げたヘック。話が進まないな……
『私はマイちゃんのママであり魔道具。浄化持ちだけど広める気はない。ここまではいいかな?』
私の言葉にコクコクと頷くヘック。
『イーリスは知ってるけどディッシュにはまだ内緒にしている。分かった?』
「は、い」
喉をごくりと鳴らしたヘックは小さく返事を返すと、そのまま魔石を数える作業に没頭しているようだった。そしてマイちゃんがやっと近くまできたので私はそっと鞘の中に収まった。
それから平常心を取り戻したであろうヘックが数え終わった小魔石を回収箱に入れると、金貨を4枚マイちゃんに手渡していた。なんだか少し多いような……まあ多いなら問題はないか。
そしてその日は再度の高級レストランに行って、マイちゃんが「これにする!」と目をキラキラさせて指刺した『お子様セット』が運ばれてきたのでそれを美味しそうに食べている。
そして私はそのマイちゃんを見るという贅沢な時間を堪能した。
この世界にもあるんだね、お子様ランチ……
食後は冒険者ギルドのゲストハウスに戻り就寝する。
気持ちよさそうに眠るマイちゃん。その手には私、そして『お子様セット』のご飯の上に乗っていた良く分からない模様の入った旗が握られていた。その様子を何時までも眺めつつ、自分のステータスを確認するのであった。
そして事件は翌日やってくる……
◆◇◆◇◆
今日もご機嫌なマイちゃんが伯爵家へと出勤する。
みんなに挨拶すると、昨日はいなかったレイリーちゃん16才にも挨拶をする。ヘレンちゃんと同じ16才だがちょっとおっとりしていてもう少し幼く見える、がしかし!その豊かに育ったお胸が非情にイイ!
そんな興奮ポイントもありながら、昨日と同じようにワゴンに食事を乗せてマリアちゃんたちに付いて昨日と同じ部屋へとやってきた。
だが今日はアシスとそのお付きの見習い執事くんたちも付いてきていた。
そして昨日と同じように食事は進む。
今日はレイリーちゃんもいるのでスムーズに時間が進む。マイちゃんも様子を真剣に眺めている。いつかここに加わってテキパキと働くマイちゃんもみられるだろうか?そして何事もなく食事は終わりかたずけを……
昨日と同じようにかたずけが済むと、マリアちゃんたちがそばにやってきた。
そして、昨日とは違いこの伯爵家の当主、モーモス・ポボスがスッと立ち上がる。ゆっくりとこちらへと歩いてゆく。
「マイと言ったか、君が浄化魔法を使えるというのは間違いないんだね?」
私は最大限に警戒していつでも飛び出せる準備をした。
「は、はい。じょうかまほうがつかえます」
「そうかそうか!それは素晴らしいことである!」
伯爵が両手を広げて笑顔を見せている。というか昨日マリアちゃんに口止めするの忘れてた私……まあ、悪いようにはならないよね?
「昨日、6部屋を浄化したそうだが、魔力は大丈夫であったか?」
「はい。ぜんぜんだいじょうぶです」
マイちゃんの言葉にうんうんと首を動かす伯爵。
「では、正式採用として雇ってやろう。部屋も一室与えよう!仕事は1日4時間程度で今の10倍は出そう!休みも週に2日、もちろん生活のすべては保証しよう!」
満面の笑みでマイちゃんに話しかける伯爵……これは、どうしようかな。マイちゃんは返事ができない様子で私の方を見る。
「驚くのは無理ないであるな。あまりの好待遇と思うかもしれんが、私は良い人材は良い暮らしをするべきだと思っている!マイ、おまえには今までと比べ物にならない良い暮らしを約束しよう!」
「メイドさんの、おしごとですか?」
マイちゃんが困った顔でそう尋ねている。私は最大限に警戒して何時でも飛び出せる準備をしていた。ついでに……
――――――
名前:モーモス・ポボス
種族:人族
力 120 / 耐 80 / 速 60 / 魔 90
パッシブスキル 『魅力向上』
アクティブスキル 『交渉』
称号 『豪商』
――――――
『魅力向上』魅力を上げ人の目を引き付ける。
――――――
魅力向上ね……だから初見で私も大丈夫そうかな、なんて思ったのかもしれない……これ断ったらどうなるのかな?まあ良い人そうではあるけど……
「もちろんそんな物は必要ないのだ!時間と魔力が許す範囲で魔石に浄化を籠めるだけで後は寝て暮らせるのである!苦労することはないのだから!」
その言葉にマイちゃんが困った顔をする。
元々稼ぐだけなら冒険者でいいからね……
マイちゃんは私を再び見るので『いやなら断ってもいいよ』と小さく返事を返した。
現在のステータス
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名前:ママ
種族:マイの不朽なモップ
力 90 / 耐 ∞ / 速 45 / 魔 50
パッシブスキル 『痛覚耐性』『視界確保』『念話』『不朽』『怪力』『精神耐性』
アクティブスキル 『浄化』『念動力』『影の手』『突撃』『棒術』『鑑定眼』『強化』『火弾』『収納』
称号 『マイちゃんの眷属(呪)』
――――――
これ以前は過去話参照
『精神耐性』どんまい……
『強化』あなたをつよくするそのあいで!
『火弾』もえつくせ!
『収納』いいのいいの。もうないないしましょーね。
『回収』ちょっとこれ、もらってくね?
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名前:マイ
種族:人族
力 60 / 耐 30 / 速 30 / 魔 60
パッシブスキル 『精神耐性』
アクティブスキル 『小回復』
称号 『ママの飼い主(呪)』
――――――
メイドの仕事ができるならこのまま雇ってもらおう!でもそうじゃない時はお断りだね。ところで、悩むマイちゃんも最高だよね!
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