プロローグ

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 紀元79年、歴史に名高いヴェスヴィオ火山の大噴火が発生する。  当時、ミシェリナムという都市に暮らしていた小プリニウスはこの惨劇を目撃し、遠くから観察した。彼は噴火の経過や、火砕流の襲来により恐慌に陥る人々の様子について、友人で歴史家のタキトゥウスへ宛てた書簡の中で詳しく記述した。彼の記述は、古代史を揺るがす天災の詳細を知るための貴重な情報源となっている。  その書簡に言う。  ——天井が開き、火山から非常に大きな炎が勢いよく噴出し、私たちに近づいてきた。その煙や灰が狭い軌道を描いて上昇し、非常に高く空に達した。その後、火山の火花が星座のように点滅し、私たちを驚かせたのである。  世界で初めてこのような破局的噴火の克明な様相を書き残した小プリニウスの名にちなみ、大規模な降下軽石を起こす火山の噴火を火山学用語でプリニー式噴火(plinian eruption)と呼ぶ。
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