0人が本棚に入れています
本棚に追加
「貴女が、天音の遠縁でも友人でも女性記者でも、
なんでもいいんですけど、とりあえず帰ってください」
そう言って主人はドアチェーン越しに対話した相手を帰そうとした。
『犬の名前は、あまおと。
雨音と漢字で書いて、あまおと』
と、スマホの文字を見せられて、主人はドアを閉める手を止めた。
女性は素早く携帯を打ち込んでいく。
『天音が付けた名前ですよね?
雨の日に里親探しに出かけた時に
出逢った犬だからと。
そして天音の1文字から取った』
「それは......。一般には公表していない。
ごくごくわずかな人間しか、知らないことです」
『お願いです。お話しをさせてください。
私は精神的ストレスで声が出なくなりました。
だからこそ、天音の気持ちがわかるんです』
主人は声には出さず、ドアを大きく開けることで『部屋へどうぞ』
と、答えた。
最初のコメントを投稿しよう!