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「お茶......とはいえ、ペットボトルの麦茶だけですが。
あ、すみません。洗い物を面倒がって、紙コップしか......」
エアコンがほどよく効いていても、台所の隅に置いたゴミ袋からは
紙コップの底に残った麦茶の匂いがする。
もちろんそれは、ワシが犬だからだ。
ついでに、食べたあとのコンビニ弁当に付着した匂いも。
とはいえ主人は部屋を綺麗にしているほうだ。
この女性にはわからぬだろう。
ワンルームとしては広い部屋だが、食事用のテーブルと椅子は無い。
パソコンを設置しているテーブルと椅子がひとつ。
食事もそこでしている。
主人は、ひとつしかない椅子を彼女に促して、自身はベッドの上に
座った。
せっかくピーンと張られてシワひとつなかったのに、主人の細身の
身体でもベージュの薄いシーツが揺らいだ。
『椅子をお借りします。お茶は遠慮いたします』
それにしても文字を打つのが早い人だ。
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