世界樹とともに、永遠に

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 竜巻は次々と増えて九本になり、そのうち二本は畑を突っ切って街の方へ向かいつつあった。ニラライ河上では一本の竜巻が小舟を巻き上げている。一方で、城塞近くにあった竜巻が火花を散らして収束していくのが見えた。闇の森の住人が力尽きた様子でそばに座り込んでいる。 「闇属性魔力で消したようだな」とジゼル。 「そのようですね。かなり消耗しているようですから落雷を避けながら全部消すのは厳しいでしょう。それに、魔術師が巻き込まれては危険です。やはり大元の黒龍をどうにか――」  黒龍を見上げていたノードがふと息を飲んだ。 「アルストロメリア」 「えっ?」  彼の視線を追うと瓦礫から上空へ向かう人影があった。  ゆるくウェーブのかかった金髪に小麦色の肌。ライトベージュのローブの裾をなびかせ、背につけた風翼。思い出したのはユリエスト峡谷で氷壁再凍結実験をしたときのことだ。崖の上から舞い降りてきた天使みたいな魔塔支部長。あの時と違うのは、彼女が闇属性魔力を漂わせ背につけた翼が黒い靄を棚引かせていること。  誰もが黒龍に向かう彼女に釘付けになっていた。 「影ですね」とノードが口にした。
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