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バタフライ通りの住人たち
バタフライ通りへの移動に使ったスクロールはゼンが作ったものだった。メインストリートから少し奥まった位置にある路地裏と聞いていたけど、この異臭と荒れ具合は尋常じゃない。以前なら多少離れた場所でも通りの喧騒が聞こえていたのに、耳に届くのは獣の鳴き声と風音くらいだ。
「長居したくありませんね。移動しましょう」
ノードはマントで鼻を覆い、飛び交う蝿を手で払った。壁には泥と血が飛び散り、積み上げられた木箱のそばに横たわってるのは尻尾が四本ある獣。尻尾も辛うじて数が数えられるくらいで、ほとんど原型を留めないほど食い荒らされていた。泥濘んだ地面に大小何種類かの獣の足跡があり、庇の上では数羽のカラスがジッとこちらを見下ろしている。
「四本テールが餌食になってるということは、もっと危険な魔獣がうろついているはずだ。ノードの予想通りこっちの方がエリスティカより状況が悪いみたいだな」
ネヴィルはそう言うと、空を見上げて耳を澄ました。青空がのぞいているものの灰色がかった雲がいくつも棚引き、少し前に雨が上がったばかりのようだ。ノードは水溜りを避けて歩を進める。
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