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シドの服はボロボロに焼け焦げ、地面に突っ伏した顔は泥で汚れていた。黒い靄を纏い、息はあるけど顔を上げる力もなさそうだ。
「……ころ、せ」
「シド、黒龍の使役を解くなら浄化してあげましょう」
「クッ……、ククッ」
シドが笑うのをノードは無言で見ていたけど、ジゼルは何か気になるのかスンスンと鼻を鳴らした。
「おい、まずいぞ魔塔主!」
「先にい……く」
シドの手がだらりと地面に落ち、その手のひらから転がり落ちたのは羽と月のカフスボタン。直後、ゴウッと強い風が吹きつけノードはあたしを抱いて後ろに飛んだ。目の前に竜巻が出現し、それはシドを巻き込んで空へと伸びていく。ジゼルがあたしの服に爪を立てて風に耐えた。
「おい、シドは逃げたわけじゃないよな?」
イェルンがノードに聞いた。
「違います。彼は死にました」
ノードの声は動揺で掠れている。
「おい、魔塔主。どうするんだ。あのカフスの毒がないと黒龍を止められないぞ」
「わたしとウィローであの額のマナ石をどうにかします。闇属性で対応するしかありません」
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